SARS-CoV-2の感染によってヒト気管支上皮細胞のACE2の発現が上昇し感染を加速する

Second Military Medical University, Shanghai, Chinaらのグループは、ヒトの気管支上皮細胞で、SARS-CoV-2感染がACE2の発現をエンハンスすることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8254647/

SARS-CoV-2の感染受容体であるACE2が、ヒトの気管支上皮細胞(BASE-2B細胞)にSARS-CoV-2 Spikeタンパク質をトランスフェクトすることで、大きく発現上昇することが見つかりました。下図において、BASE-2B細胞は、空のベクター或いはSARS-CoV-2 Spikeを発現するようにしたベクターでトランスフェクトされており、long ACE2、dACE2、total ACE2をqRT-PCRで検出したところ、SARS-CoV-2 Spike有で大きく発現上昇しているのがわかります。また、long ACE2 と dACE2 を、C-terminal anti-ACE2 抗体でWestern blotしたものも示されており、同様にSARS-CoV-2 Spike有で発現が上昇していることがわかります(β-actin は、コントロールとして使われています)。

SARS-CoV-2 Spikeタンパク質は、IFN-stimulated genes (ISGs)の発現を促しますので、Spikeタンパク質がJAK-STATシグナリングを活性化させることによってACE2の発現を誘導できるのかどうか?を確認しています。そこで、Spikeを過剰に発現するようにしたBASE-2B細胞を用いて、リン酸化と、STAT1 と STAT2 活性化を評価したところ、確かにSARS-CoV-2 Spikeの影響で、STAT1とSTAT2のリン酸化が加速され、これらが活性化されていることが分かりました。更に、STAT1の活性化を阻害するFludarabine を加えたところ、BEAS-2B細胞におけるSARS-CoV-2 Spikeによって誘起されたACE2の発現が有意に低下しました。これらのことを総合すると、SARS-CoV-2 SpikeがIFNエフェクターであるJAK-STATシグナリングを活性化することによってlong ACE2の発現を誘起しているということが明らかであります。