早産児を壊死性腸炎から守るには母乳がとても効果的

USDA Children’s Nutrition Research Center, Department of Pediatrics, Baylor College of Medicine, Houston, TX 77030, USAらのグループは、プレバイオティクスとプロバイオティクスだけでは、粉ミルクだけをベースにした食事で壊死性腸炎から早産児を守るのに十分ではないと報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10255242/

壊死性腸炎は、早産児の胃腸疾患による主な死因であり、死亡率は15~40%に達します。本研究では、腸内細菌として、(1)Escherichia-Shigellaは、健康な子豚に有意に多く存在し、疾患の重症度と負の相関があり、(2)Clostridium sensu stricto 1 and Enterococcusは、病気の子豚の結腸に有意に多く存在し、疾患の重症度と相関していることが示されています(下図参照)。

食事性プロバイオティクスであるBifidobacterium longum 亜種およびミルクオリゴ糖であるシアリルラクトース(3’SL)の補給だけでは改善効果は認められませんでしたが、母乳は壊死性腸炎の発生率を有意に減少させることが示されています。

一型糖尿病の合併症における補体C3の特異的な糖鎖修飾変化について

Faculty of Pharmacy and Biochemistry, University of Zagreb, Zagreb, Croatiaらのグループは、一型糖尿病の合併症における補体C3の特異的な糖鎖修飾変化(c3.Asn939-N2H10)について報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2023.1101154/full

補体成分C3のN-型糖鎖修飾について、様々な合併症重症度を持つ189人の一型糖尿病被験者のプロファイリングを実施しました。分析は、Con A レクチンによるハイ・マンノース糖タンパク質のエンリッチメント、Glu-C 消化、糖ペプチド精製を行い、nano LC-ESI-MSを用いて行われました。

結果として、アルブミン尿と網膜症では ひとつの糖鎖構造(C3.Asn939-N2H10:下図参照)のみが有意に変化し、C3.Asn939-N2H10とHbA1cの間には強い相関関係があることも分かりました。

注意欠如多動性障害(ADHD)における血清糖タンパク質の糖鎖修飾の変化について

Institute of Chemistry, Slovak Academy of Sciences, SK-84538 Bratislava, Slovakiaらのグループは、注意欠如多動性障害(ADHD)における血清糖タンパク質の糖鎖修飾の変化について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10218324/

本研究は、血清蛋白質の糖鎖分析から糖修飾変化に基づいて新しいADHDのバイオマーカーを見つけ出すことが可能かどうかを判断することに焦点を当てています。本研究においては、レクチンマイクロアレイとMALDI-TOF MS法という2つの異なる技術を使用して血清東端質の糖鎖構造変が分析されています。

その結果、ADHDではコア・フコースの修飾が増加し、バイセクティングGlcNAc有する二分岐/三分岐N-型糖鎖、およびα2-3シアル酸修飾が減少することが判明しました。

トマトの根から分泌されるヘキサデカン酸が善玉菌であるシュードモナス菌のバイオフィルム形成を最も強く促進する

School of Biotechnology and Pharmaceutical Engineering, Nanjing Tech University, Nanjing, Chinaらのグループは、トマトの根から分泌されるヘキサデカン酸が善玉菌であるシュードモナス菌のバイオフィルム形成を最も強く促進すると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10220591/

植物成長促進細菌は、その安全性、病気や害虫の生物学的制御、および耐環境性を誘導する能力により、農業用途で広く使用されつつあります。 それら善玉菌の根圏定着、走化性、バイオフィルム形成は、根からの分泌物と特定の代謝産物によって誘導されることが知られています。

本研究では、特定の濃度のシュードモナス・スタッツェリ NRCB010 を接種すると、トマトの成長が大幅に促進され、トマトの根からの分泌物に大きな変化が誘発されることが示されました。これらの分泌物の中で、n-ヘキサデカン酸が、シュードモナス・スタッツェリの成長、走化性反応、バイオフィルム形成、そして根圏定着を最も強く誘導することが分かりました。

胆管癌のバイオマーカーとして癌由来エクソソームのハプトグロブリンの末端フコース修飾が注目される

Department of Life Sciences, Pohang University of Science and Technology (POSTECH), Pohang, Gyeongbuk, Republic of Koreaらのグループは、胆管癌由来エクソソームのハプトグロブリンの末端フコース修飾が胆管癌のバイオマーカーとして有望であると報告しています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fonc.2023.1183442/full

腫瘍の糖鎖修飾の変化は、潜在的な癌のバイオマーカーとして着目されています。多くの研究は、しかしながら、可溶性形態で血液を循環する分泌分子の異常な糖鎖修飾変化を見つけることに焦点を当てています。本研究では、細胞外小胞 (EV) と相関する膜結合成分の末端フコシル化が胆管癌と相関することが示されました。

糖鎖分析により、胆管癌由来のEVには通常のEVよりも多くのα1-3/4フコシル化糖鎖 (末端フコシル化) が含まれていることが明らかになりました。しかし、注目すべきことに、α1-6フコース (コアフコース) はサンプル間で同等でした。結果として、胆管癌由来EVにおけるβ-ハプトグロブリン(β-Hp)のα1-3/4フコシル化は、胆管癌の早期診断や術後の再発予測のバイオマーカーとして有用であることが示されました。そして更に、胆管癌由来のフコシル化EVが腫瘍の進行に寄与していることも示されました。


胆管癌におけるEV-Hpのフコシル化の変化

乾癬患者と健常者の常在皮膚細菌の違いについて

Biotechnology Department, College of Science, University of Baghdad, Baghdad, Iraqらのグループは、乾癬患者と健常者の常在皮膚細菌の違いについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10133631/

門レベルでは、乾癬患者の病変皮膚では、健常者と比較して放線菌が有意に増加し、ファーミキューテスが大幅に減少しましたが、プロテオバクテリアに有意差は見られませんでした。更に、本研究では、乾癬皮膚の皮膚における優勢な門が放線菌とファーミキューテスであることを示しています。

どの根圏細菌属がもっともリンの可溶化能力が高いのか:ローズウッドの根圏から

School of Agriculture, Graphic Era Hill University, Bhimtal, Indiaらのグループは、ローズウッドの根圏からどの細菌属が最もリンの可溶化能力が高いのか?について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10147649/

その結果、シュードモナス属、クレブシエラ属、ストレプトマイセス属、パンテア属、キタサトスポラ属、ミクロコッカス属、ブドウ球菌属に属する菌株が強力なリン可溶化菌としてスクリーニングされました。
これらの内、シュードモナス エルギノーザおよびクレブシエブ バリコーラが、最も高効率なリンの可溶化能力を示したということです。

植物善玉菌(バチルス、シュードモナス、バークホルデリアら)の比較遺伝子機能解析

State Key Laboratory of Pharmaceutical Biotechnology, School of Life Sciences, Nanjing University, Nanjing, Chinaらのグループは、NCBIデータベースに存在する植物善玉菌(PGPB)の比較遺伝子機能解析の結果について報告しています。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.05007-22?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

PGPB は、バチルス属、シュードモナス属、バークホルデリア属などの 60 の細菌属を含む有益な細菌群であり、植物の葉や土壌に広く定着し、植物の成長を促進し、病原体の感染を阻害します。PGPBは、葉 ([LA]; 195 株) または根圏土壌 ([SA]; 283 株) のいずれかにコロニーを形成します。

本研究の結果は、PGPB が一般に多量の炭水化物酵素 (CAZymes) を含み、植物にコロニーを形成する能力が高いことを示しています。 LA PGPB株の中で、シュードモナス 株は他の株よりも豊富なCAZymesを有し、この属が理想的な葉間生物防除剤に成り得ることを示しています。CAZymesは植物病原体の細胞壁を破壊し、植物病原体を死滅させることができます。逆に、SA PGPB株の中で、バークホルデリア株は炭水化物代謝酵素をコードする遺伝子が多く、炭水化物利用の多様なメカニズムを持っていることが示唆されました。LAとSAの生息地で見つかった バチルスとパエニバチルス 属は、より多くの二次代謝産物クラスターを産生し、葉と土壌の両方の環境に適しています。細菌の二次代謝遺伝子クラスターの数が多いほど、生物学的防御を実行する能力が強くなります。PGPBのバチルス株の大部分は、LAおよびSA生息地の他の分類学的グループよりも豊富な二次代謝クラスターを持っていました。実際、バチルス株は市場で広く用いられているな生物的防除剤となっています。

プロテオグリカン・リンク・タンパク質1(HAPLN1)は、膵癌の腹膜播種のドライバーであり、優れた予後マーカーと成り得る

Division Vascular Signaling and Cancer, German Cancer Research Center (DKFZ), Heidelberg, Germanyらのグループは、プロテオグリカン・リンク・タンパク質1(HAPLN1)は、膵癌の腹膜転移のドライバーであり、優れた予後マーカーと成り得ると報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41467-023-38064-w

細胞の可塑性は、腫瘍細胞の重要な特徴です。細胞可塑性は、上皮細胞の間葉細胞への転換、ならびに間葉細胞の上皮細胞への逆転換を誘導することによる異なる細胞状態間を変換する能力であり、がん細胞の幹細胞性の特徴であります。このような可塑性は、がん細胞の腫瘍微小環境への侵入と適応をより起こし易くするだけでなく、アポトーシス、免疫攻撃、および化学療法からも保護するのに役立ちます。

がん細胞転移の重要な調節因子は、腫瘍細胞が転移部位へ浸潤する際に直面する腫瘍微小環境です。腫瘍微小環境は、がん関連線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、細胞外マトリックスなど、幾つかの細胞および非細胞成分で構成されています。膵癌においては、腫瘍微小環境は強く線維形成性であり、細胞外マトリックス成分かなり蓄積されています。 細胞外マトリックスの主要成分の一つであるヒアルロン酸は、部分的な上皮間葉転換、浸潤、免疫調節、および治療抵抗性を促進することにより、腫瘍の進行と転移を促進します。細胞外マトリックスは、がん関連繊維芽細胞によって主に生産されます。

HAPLN1は、細胞外マトリックスにおけるヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの架橋剤ですが、がんにおけるその役割はこれまでのところよく分かっていませんでした。本研究では、HAPLN1が、隣接組織と比較して膵癌で最も昂進した遺伝子であることが確認されました。HAPLN1は、がん細胞に高度に可塑性の表現型を誘導し、膵癌における腹膜播種のドライバーとして機能していると定義付けられました。

タバコの黒色シャンク病にかかわる土壌細菌叢の特徴とバチルス菌による生物的防除の影響

Key Laboratory of Microbial Resources Collection and Preservation, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Institute of Agricultural Resources and Regional Planning, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing, Chinaらのグループは、タバコの黒色シャンク病にかかわる土壌細菌叢の特徴とそのバイオコントロールについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10108594/

病害が発生している圃場から得られたタバコ根圏土壌サンプルを病害群(D群)とし、健常なタバコが生育している対照区から得られたタバコ根圏土壌サンプルを健常群(H群)とし、病害を発症している圃場にタバコの苗木を移植した後、Bacillus velezensis S719からなる生物的防除剤で処理された圃場から得られたサンプルを生物的防除群(B群)として定義しました。

これらの圃場におけるDesease indexは、下図のようであり、H群で一番低く、D群で一番高く、バチルス菌の接種は病害の抑制に効果があることがわかります。

細菌分類群の相対的存在量を、網(class)レベルで比較した結果、次のような特徴がありました。
B群では、AlphaproteobacterがASVの27.2%を占め、同じグループの他の網よりも少なくとも2倍多い。
D群では、Actinobacterが豊富で、ASVの13%を占めていましたが、B群とH群の割合はそれぞれ10.6%と9.5%でした。
H群では、SphingobacteriaとCytophagiaが豊富で、それぞれ ASVの6.7%と3.5%を占めていました。