バチルス菌がシュードモナス菌を代謝物のクロスフィーディングでリクルートし、植物の成長を助ける

Technical University of Denmark, Kongens Lyngby, Denmarkらのグループは、バチルス菌がシュードモナス菌を代謝物のクロスフィーディングを介してリクルートし、植物の成長を助けると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8483172/

バチルス菌とシュードモナス菌は、植物の根圏における善玉菌として最も広範囲に研究されています。植物の善玉菌(バチルス velezensis SQR9を含む)は、植物の生長を助け、病気に強くし、塩害にも強くするとして知られています。このような植物の根における細菌類の共生と植物の生長促進には、根圏での効率的なバイオフィルムの形成が不可欠とされおり、細胞外多糖類(EPS)やTasAタンパク質線維が関わっています。

バチルス菌の一種であるB. velezensis SQR9 の根圏における影響を調べるために、キュウリの種まき後、二週間目にSQR9を接種し、その16日後に根圏土壌サンプルを回収しました。シュードモナス、Vogesella、 Pseudoxanthomonas、Chryseobacterium、 Pseudoduganella、Lysobacter、lebsiella、Cellvibrioらの根圏バクテリアが増加していることが判明しました。特に、これら増加した根圏バクテリアの38%は、シュードモナス菌であり、バチルス菌がシュードモナス菌らをリクルートし、お互いが相乗的に相互作用していることが示唆されました。

この根圏バクテリアのコンソーシアム(バチルス菌とシュードモナス菌)は、水田土壌において、強いキュウリの成長効果を示し、二種類の菌が相乗することで、単独の場合に比べて、根の長さや重さ、そしてまた葉緑素の量が顕著に増加していました。この水田土壌を塩害化した場合には、シュードモナス stutzeri XL272 がコントロールに対してのみならず、最も強い塩害耐性をもたらしました。この塩害耐性ですが、シュードモナス stutzeri XL272単体の場合よりも、根圏バクテリアコンソーシアムの方が若干高くなっていることにも着目しましょう。これらの結果は、植物生育促進性根圏細菌(PGPR)が土着の善玉菌の根圏における再構成を促し、結果として植物の生長と塩害ストレスへの耐性を高めているということを物語っています。

しかし、大きな問題は、どのようにしてバチルス velezensis SQR9 がシュードモナス菌ら善玉菌をリクルートしたのか?ということであります。
著者らは、 分枝鎖アミノ酸のような代謝物のクロスフィーディングがそのメカニズムを理解する上での鍵であると、バチルス菌とシュードモナス菌のトランスクリプトームの変化から推測しています。イメージとしては、以下のような感じです。
バチルス velezensis SQR9 が根からの分泌物に引き寄せられ、その根圏で共生を開始します。植物の根にバイオフィルムが形成されると、そこから代謝物が分泌され、土着の植物善玉菌(シュードモナス菌など)がそれに引かれて集まってきます。このようにして強く連携したバイオフィルムが形成されることで、これらの菌は細胞外マトリックスや代謝物を共有し、根圏での適応性を高めていきます、そしてその結果、植物の生長が促進され塩害に対するストレス耐性も向上するのです。