エゾタマキ(二枚貝)から抽出された新しいレクチンGYLの特性:免疫防御

A group from Far Eastern Branch of Russian Academy of Sciences, Vladivostok, Russiaらは、エゾタマキ(二枚貝)より抽出された新規のレクチン、GYL、について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8466245/

GYLと名付けられたレクチンは、18kDaの単量体がジスルフィドを介して結合した二量体であることが分かりました。

GYLのアミノ酸配列はBLASTにリストされている他のレクチンとは顕著なホモロジーは見せませんでしたが、NCBIのドメイン検索プログラムでは、EPN (Glu-Pro-Asn) と WND (Trp- Asn- Asp) の配列がGYLに見つかり、これは、C-型レクチンの糖鎖結合特性を反映するものです。

GYLは、この二枚貝の色々な組織に発現していますが、血リンパ節や外套膜において発現が顕著に高くなっており、生殖腺に比べると、それぞれ3.5倍、2.4倍高くなっていました。

GYLは、すべての赤血球に対して凝集反応を示し、その糖鎖結合特異性はあまり特異的でないことを示唆しています。詳細な糖鎖結合特性はまだ不明ですが、GYLは、バクテリアの細胞膜に発現しているpeptidoglycan (PGN) や LPS に対してドーズ依存的に結合するものの、カビ類に発現するβ-1,3-glucan や mannanには、アフィニティーを示しませんでした。

これらの事柄を考慮すると、GYLは、病原菌の感染に対して免疫防御的な役割を果たしていることが示唆されます。実際、V. proteolyticus で刺激を与えたり、ディーゼル燃料に暴露してみると、GYLの発現が大きく変動しました。48時間後には、GYLの発現量は25倍にも増加していました。この事は病原性バクテリアの感染や人為的な因子が二枚貝に顕著な影響を及ぼし、それが免疫防御的な分子としてGYLの多量合成を引き起こしていると考えられます。