新型コロナウイルス(COVID-19)の症状が異なる背景には、液性免疫と細胞性免疫のバランスがある

新型コロナウイルスに感染した場合、無症状から重症まで幅広い病態が存在します(COVID-19)。無症状者と重症患者ではどのように免疫反応が異なっているのか?この問題については、数多くの研究が行われていますが、Third Military Medical University, Chongqing, Chinaらのグループの研究は、かなりクリヤに液性免疫と細胞性免疫に大きな違いがあることを示しています。
https://www.nature.com/articles/s41392-021-00525-3

病態を無症状/軽症、中症/重症に分けた場合に、無症状/軽症の場合には、SARS-CoV-2特異的なIgGの産生が少なく、胚中心も形成されないため、SARS-CoV-2特異的なB細胞の活動は過渡的な形で終わってしまいます。それに対して、中症/重症の場合には、SARS-CoV-2特異的なIgGは如実に増加しており、胚中心が活動していることを表すcirculating cTFH細胞やケモカインであるCXCL13が有意に上昇しており、液性免疫が反応が強く表れていることを示します。
一方、無症状/軽症の場合には、IFN-γを産生するCD8+ T細胞、SARS-CoV-2特異的なTH1細胞、Granzyme B(GZMB)が高発現しており、細胞性免疫が非常に活発であることを示します。(なお、Granzyme B(GZMB)は,活性化した細胞傷害性T細胞とNK細胞の細胞質顆粒に存在するセリン・プロテアーゼであり、標的細胞のアポトーシスを誘導します。)

つまり、無症状/軽症の場合は、細胞障害性T細胞や、ここでは論述されていませんがNK細胞らがSARS-CoV-2の感染を抑え込んでいるが故の状態と考えられ、このプロセスでウイルスを抑え込めなくなると液性免疫が前面に出てくるという考え方が成り立ちそうです。あるいは、液性免疫と細胞性免疫のバランスの結果と言ってよいのかも知れません。
また、最近は季節性の風邪の原因となるコロナウイルスに対する抗体のSARS-CoV-2との交差反応も着目されており、無症状/軽症に関係している可能性があるということが指摘されていますが、更なる検証が必要ですとしています。