新型コロナウイルス(COVID-19)の特徴的なふたつのグループに見られる免疫反応の違いと重症度との相関について

Sorbonne Universite, Inserm, Universite de Paris, Franceらのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)の異なった免疫プロファイルを持つ二つのグループを同定し、それがCOVID-19の重症度と関係していることを報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8312547/

非常に興味深いことに、COVID-19入院患者がふたつのグループに分けられることが分かりました。入院時における全血のトランスクリプトームの主成分解析から、グループ1(青)は健常者に近く、グループ2(赤)は離れていました。

グループ2において高発現している遺伝子は、骨髄細胞の特徴、好中球の活性度、炎症応答、TLRとType I IFNのシグナルパス、T細胞増殖の抑制(例えば、arginase 1、PDL1、PDL2、CD276/B7-H3)らに属しています。
反対に、CD8 や NK細胞機能、T細胞活性化、ヘルパーT細胞分化、共刺激受容体(TNFRSF4 (OX40)、ICOSLG (ICOS ligand)、TNFRSF18 (GITR)、TNFRSF11A (RANK))、そして抗原提示らに関係している遺伝子は、グループ2において低発現となりました。これらの結果は、異なった免疫プロファイルを持つ患者がいることと適合しています、即ち(i)獲得免役トリガーのグループ(group 1)と(ii)悪化した骨髄系自然免疫応答と獲得免役不全(group 2)という訳です。

グループ2とグループ1では、年齢や糖尿病において差があるわけではありません、が、グループ2の方が肥満度はグループ1よりも高くなっています。COVID-19の重症度の基準はWHOの定めたそれに従っています、軽症が4-5 WHO scoreとなり、重症が >6 WHO scoreとなります。驚くべきことに、グループ2のほとんどすべての患者(94%)は、WHO scoreが6以上となっており、それに比べてグループ1の同比率は25%にしかすぎません。ふたつのグループの間で見られるその他の重要な器官や組織(例えば、肝臓、腎臓、心臓、血管)における生物学的な指標を比較すると、肝臓のダメージを反映する脂肪肝指標 (HSI)やプロトロンビン比 (% PR)、腎臓障害を反映する尿中 Na+やNa+/K+比、循環器のダメージを半円するトロポニン、血管内皮の状態を反映するE-セレクチンや胎盤増殖因子 (PlGF)らが、グループ2において顕著にグループ1とは異なっていました。包括的に言えば、多臓器不全、血管内皮のダメージや血栓症がグループ2の患者で際立っているという事ができます。また、死者の88%はグループ2に属していることからも、グループ間の免疫応答の違いが顕著な結果の違いとして現れています。

ふたつのグループ間の免疫細胞数の違いについては、グループ2の特徴は、白血球の増加、顕著なリンパ球減少症、CD8+ T細胞の減少、CD4+ T細胞の増加、NK細胞の減少、好中球の増加がみられることであります。加えて、グループ2においては、血中の炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、TNF-α、可溶性TNF受容体2)らが顕著に増加しています。これらのデータは、グループ2において炎症反応や好中球反応が高く、NK細胞やT細胞応答が低下していること、グループ1においてはより獲得免役反応を好むようなプロファイルになっていることを裏付けています。注目すべきは、グループ2においては、PMBCのTLR3の発現が上昇していることかも知れません。