SARS-CoV-2感染者から得られた中和抗体の性格

King’s College Londonらのグループは、SARS-CoV-2に感染した患者=3名から得られた中和抗体の特徴について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8015430/pdf/main.pdf

著者らは、患者P003(入院となりICUにも入室)、患者P054(入院にはならず)、患者P008(感染はしているが無症状)の3名から合計107個のSARS-CoV-2 Spikeタンパク質に特有な抗体を得ました。107個の抗体の内、35.5%がRBDをターゲットとする抗体、32.7%がNTDをターゲットとする抗体、S1をターゲットとするものが0.9%、S1以外をターゲットとするものが30.8%となりました。SARS-CoV-2に対する中和活性を示す抗体の割合は全体の45%であり、この内約70%がRBDをターゲットとし、約20%がNTDをターゲットとする中和抗体となっています。

RBDとNTDをターゲットとする中和抗体の力価は同程度であり、IC50は、2.3-488ng/mLでありました。
最も高い中和能力を示したものはRBDをターゲットとするP008_108抗体であり、IC50=2.3ng/mL、NTDをターゲットするする中和抗体では、P008_056のIC50=14ng/mLでありました。
無症状患者から得られた中和抗体が高い力価を示したのは興味深いと思われます。

RBDに比べるとNTDには糖鎖修飾が強いことから、中和抗体に対する糖鎖の影響をkifunensine、swainsonineといった糖転移酵素の阻害剤を用いて調査したものが下図です。糖鎖修飾の変化によって、Spikeタンパク質のコンホーメーションの変化、或いは糖鎖による結合阻害が影響しているものと考えられます。