SARS-CoV-2のFurin cleavage site(PRRAR)における変異の影響について:P681HとP681R

Cornell University, USAのグループは、SARS-CoV-2に存在するfurin cleavage siteのP681R変異の影響を議論しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8259907/

ウガンダで流行したA.23.1 変異株には、次のような変異がSARS-CoV-2 Spikeに存在します(F157L、V367F、Q613H、R102I、L141F、E484K、P681R)。著者らは、P681Rの変異に着目し、Wild type(P681)と比較したところ、下図に示すように、P618R 変異は、WTに比べて、furinによるS1/S2の切断効率を大幅に上昇させることが分かりました。

今日、最も流行しているSARS-CoV-2の変異株は、B.1.1.7であります。この変異株においては、spike S1/S2 “furin cleavage site” のP681H変異が特徴であり、感染率の上昇に関係していると考えられてきました。極最近では、B.1.617.2 という新しい変異株が B.1.1.7 に取って代わって来ていますが、この変異株もP681R 変異をもっており、同様にfurin cleavage siteの切断効率のアップが感染拡大に関係していると思われます。

B.1.617変異株以前に現れたA.23.1 変異株は、前記したようにP681R 変異を含んでおり、2020年の10月にウガンダで出現したのですが、2021年の5月には消滅し、他の変異株 B.1.351、B.1.525(P681Rを持たない)や、B.1.617.2(P681Rを持つ)が席巻しています。

大局的に見てみると、このことはP681R 変異というのは、furinを介したS1/S2切断には重要なのですが、必ずしもウイルス感染力アップの主要なドライバーにはなっていないことを示唆します。