Mannose特異的なレクチンを用いてSARS-CoV-2をブロックする:SARS-CoV-2にはマメ科レクチンが適する

Université Paul Sabatier, Toulouse, Franceらのグループは、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MARS-Covに対して抗ウイルス効果を示すmannose特異的なレクチンについて議論しています。
https://www.mdpi.com/2073-4409/10/7/1619/htm

植物、菌類、藻類、バクテリアなどから抽出されたMannose特異的なレクチンは、HIV-1、HPV、herpes、HCV、Ebolaウイルスらに抗ウイルス効果を示すとういう観点から多くの研究があります。このような例として、藻類レクチンのgriffithsin、シアノバクテリア由来レクチンであるcyanovirinやmicrovirin、放線菌由来のactinohivin、各種GNA-関連のレクチン(NPA や ASAなど)に関する論文が多く存在します。多くのMannose特異的なレクチンは、ウイルスの増殖を、少なくともin vitro実験下では、阻止しますが、ウイルスエンベロープに存在するMannose型のN-型糖鎖に干渉する能力に依存しています。

SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2らのSpikeを修飾するN-型糖鎖は、high-mannoseのみでなく、しばしばシアル酸修飾を伴う複合型がメジャーである場合もあります。コロナウイルス毎にこれら糖鎖の分布には違いが存在しており、Spikeのシールディングに多様性が見られます。


図の説明: ほとんどが複合型である場合 (赤), ほとんどがhigh-mannose (緑), ほとんどがハイブリッド (マゼンタ)。これらの混合であってハイブリッドが少ない場合 (ピンク)、混合でhigh-mannoseがメジャーな場合 (薄緑)、混合でハイブリッドがメジャーな場合 (オレンジ)。SARS-CoV-2の場合には、high-mannose は基本的に3分岐であり、GlcNAc2-Man5–9の構造となっているが、その中でもメジャーな構造はGlcNAc2Man5となっている。

植物、菌類、藻類、バクテリアなどから抽出されたMannose特異的なレクチンは、それぞれに糖鎖結合性はすこしづつ異なるが故に、結果として、各種のコロナウイルスを特異的に認識するようなプローブ・パネルを形成することが可能であります。このような観点から、MERS-CoVに対しては、GNA-関連のレクチンや藻類やシアノバクテリア由来のレクチンが適しており、SARS-CoVやSARS-CoV-2に対しては、trimannoside Manα1,3Manα1,6Man coreに特異性を持つマメ科レクチンが適しています。