RT-PCRを用いた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出において、他のコロナウイルスとの交差反応性を無くする方法について

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染疑いの検査には、ご存知のようにRT-PCRが使用されています。検査においては、感度と特異度が非常に大切なのですが、一般に広く実施されているRT-PCRがSARS-CoV-2に対して交差反応性の観点からどれだけ高い特異性を持っているのかについては、多少とも疑問があります。そこで、感度を犠牲にせず、SARS-CoV-2検出の特異度を改善するための方法論が下記グループから報告されています。
https://www.mdpi.com/2075-4418/10/10/775

方法論としては、(1)SRAS-CoVの構造タンパク質をコーディングする部位の内、アクセサリータンパク質とエンベローププロテインをコーディングする(ORF3ab-E)の領域とカプシドタンパク質をコーディングする(N)領域の二つをターゲットとしてPCRのプライマーを設計し、(2)N領域をターゲットとして設計した人工的なペプチド核酸(PAN)をPCRのブロッカーとして併用する方法です。

ペプチド核酸とは、核酸の糖-リン酸骨格をN-(2-アミノエチル)グリシンを単位とする骨格に置き換え、メチレンカルボニル結合で塩基を結合させた化合物であり、標的DNA・RNAに対する結合親和性が1000倍近くも増加します。従って、プライマーとしては働かず、PCR反応の阻害剤として機能します。

この結果として、他のコロナウイルスやインフルエンザウイルスらとの交差反応性が消失し、SARS-CoV-2の検出率は、ORF3ab-Eに対して100%、PNA-Nに対して82.6%となったとのことです。