新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療薬としての感染阻害剤について:フーリン、II型膜貫通型セリンプロテアーゼらの阻害剤は有効か?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のSタンパク質は、感染受容体に結合するS1部位と細胞膜融合に関与するS2部位に大きく分かれます。このS1部位とS2部位の境界にはフーリン切断部位(furin cleavage site)が存在し、S2部位内にはII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(transmembrane protease serine 2:TMPRSS2)のターゲット部位も存在します。これらの部位に対する阻害剤を用いることで、新型コロナウイルスの感染を押さえることができるのではないか、という研究成果が報告されています。
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S2211-1247(20)31243-2

decanoyl-RVKR-chloromethylketone(CMK):furin阻害剤、camostat:TMPRSS2阻害剤、それに加えてRNAの複製を阻害するnaphthofluoresceinらが検討されました。実験にはVeroE6細胞が使用されています。

 

 

 

 

 

薬効と毒性を検討した結果、50%阻害濃度 (IC50) は、0.057 μM: CMK、9.025 μM: naphthofluorescein、そして 0.025 μM: camostatとなりました。 50% 細胞毒性濃度 (CC50) は、318.2 μM: CMK、57.44 μM: naphthofluorescein、そして2,000 μM: camostatでした。結果としての選択指数は、5,567: CMK、6.36: naphthofluorescein、そして 81,004: camostatとなっています。

CMKとcamostatはウイルスの初期感染を阻止し、naphthofluoresceinはウイルスの複製を阻止する、という違いがあることに注意しましょう。今後の診断薬開発のリード化合物として更なる検討を期待します。