COVID-19回復期患者から得た抗体のSARS-CoV-2変異株に対する抵抗性の評価

熊本大学らのグループは、COVID-19回復期患者由来でSARS-CoV-2 RBDに強いアフィニティーを持つIgGは、B.1.351やP.1変異株に対しても効果的な中和活性を有すると述べています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34237284/

1102種類のIgGを、2020年3月にSARS-CoV-2に感染したCOVID-19回復期患者=2名からRecombinant IgGとして得ることが出来ました。この内88種がSARS-CoV-2 Spikeに結合し、その内の10%がRBDに結合しました。最終的に中和活性が確認されたIgGは、5種類となりました。

得られた5種類のIgGですが、ひとつはNTDをターゲットとしており(= 6-74)、四つのIgGは、RBDをターゲットとしていました(= 3-5、8-92、9-105、10-121)。

これらmAbの中和活性を、WT(614G変異を含む)およびB.1.1.7、B.1.351、P.1、and mink cluster 5という変異株に対して測定しています。ほとんどのmAbは、B.1.1.7、mink cluster 5変異株に対して同程度の強さで中和活性を示しました。B.1.1.7は、6-74 (3.3-倍) と 3-5 (6.0-倍)に対しては抵抗性を示しました。NTDをターゲットとする 6-74は、mink cluster 5に対しては効果的ではありません。中和活性は、B.1.351やP.1に対しては低下しており、P.1 は、6-74 や 3-5 では中和活性が顕著に低下していました(他のmAbに比べて、2.6- から 8.0-倍)。 B.1.351 は、9-105 や 10-121で中和されましたが、6-74、3-5、8-92では中和されません。9-105 と 10-121 は、B.1.351 に対しては中和活性が低下しました(それぞれ、6.0-倍 、19-倍)。

評価した変異株は、6-74に対しては抵抗性を示し、これは恐らく、NTDに発生している変異の影響だと思われます。RBDをターゲットとするmAbの中和活性は、P.1 と B.1.351に対して減少しており、K417N/T、E484K、N501Y 変異がクリティカルなのだと考えられます。個々の変異が及ぼす影響を解析すると、K417N と K417T は、3-5に対してはクリティカルであり、8-92に対して少し影響を与えています。E484K と N501Yは、RBDをターゲットとするmAbに対しては影響を与えていません。 しかしながら、K417N、E484K、N501Yのコンビネーションでは、3-5、8-92、10-121の中和活性が低下します。興味深いのは、9-105 は、K417N の影響を受けますが、これら3個の変異の組み合わせに対しては、効果的な中和活性をしましました。今後とも発生する変異に対する影響を調査していくことは非常に重要です。