進行性子宮内膜症の診断にIgGのO-型糖鎖修飾がマーカーとなり得る

Division of Laboratory Diagnostics, Faculty of Pharmacy, Wroclaw Medical University, Polandらのグループは、血清 IgG3のO-型糖鎖修飾のの変化は、進行性子宮内膜症における炎症マーカーとなり得ると報告しています。
https://www.mdpi.com/1422-0067/23/15/8087/htm

構造的に、ヒトIgG のN-型糖鎖修飾は通常、二分岐複合型です。 もうひとつのN-型糖鎖修飾部位は、VH と VL (それぞれ可変領域の重鎖と軽鎖) にあり、すべての血清IgG の15 ~ 25% で観察されています。 IgG Fab 領域に糖鎖が存在すると、抗体の安定性が高まり、抗原結合が調節される可能性があります。 IgG3 では、Fab および Fc 領域に存在する N-型糖鎖とは別に、ヒンジ領域に O-型糖鎖の存在も観察されます。

血清中には、IgG3 ポリクローナル抗体の約 10%、IgG3 モノクローナル抗体の約 13% が O-型糖鎖修飾を含むと考えられています。各 IgG3 分子は、ヒンジ領域内の三重反復領域のスレオニン残基に結合した最大三つのO-型糖鎖を含むことができます。IgG O-型糖鎖修飾の機能はまだ完全には理解されていませんが、ヒンジ領域の構造は、タンパク質分解による切断から免疫グロブリンを保護し、IgG3 の拡張構造と柔軟性を維持するのにも役立ちます。

本研究では、進行性子宮内膜症に関して、O-型糖鎖が進行性子宮内膜症の血清IgG で発現しているかどうか、また二分岐N-型糖鎖の存在に加えて、IgG に高度に分岐したN-型糖鎖も存在するかどうかが調べられました。

血清 IgG O-型糖鎖修飾および多分岐N-型糖鎖修飾の発現分析のために、O-型糖鎖認識レクチン (MPL、VVL、およびジャカリン) および多分岐N-型糖鎖認識レクチン (PHA-L) を用いたレクチン ELISA が使用されました。また、サンプルとしては、単離された血清 IgG(i-IgG)、およびクルードな血清 IgG(s-IgG)両方が使用されました。

結果は驚くべきものでした。 s-IgGの場合、臨床的価値はほとんどありませんでした。しかし、i-IgG の場合、子宮内膜症が進行した女性と健康な女性、健康な女性と非子宮内膜症グループを比較した場合の両方で、使用した四つのレクチンすべてで最大の臨床値 (AUC = 1) が得られました。
この研究は、IgG における O-型糖鎖と多分岐N-型糖鎖の両方の発現が、進行した子宮内膜症の診断に応用できる可能性があることを示していますが、現在の研究段階では、これらの結論は主に血清から単離された IgG に関するものです。タンパク質の分離と精製は、面倒で時間のかかる作業であり、この種の診断法をルーチンの診断に適用するには大いに困難が伴います。それにもかかわらず、この研究の方向性は有望であると思われ、シンプルで迅速なタンパク質分離手順の開発が切望されます。