腸チフス菌のVi莢膜性多糖類の作用機序について

Department of Medical Microbiology and Immunology, University of California at Davis, California, USAらのグループは、腸チフス菌のVi莢膜性多糖類の作用機序について報告しています。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/mbio.02733-22

細菌性病原体は、(i) 免疫細胞によるオプソニン化および食作用を回避したり、或いは (ii) 食作用中の殺傷を回避して食細胞内に常駐することによって、宿主の免疫反応を逃れるという戦略を取ります。

サルモネラ属のチフス菌は、腸チフスの原因細菌であり、単核食細胞とリンパ球の蓄積である腸チフス結節と呼ばれる小さな肉芽腫に病原体が持続することを特徴とする重度の播種性感染症です。腸チフス菌は、Vi 抗原としても知られる病原性のVi莢膜多糖を合成します。これは、天然の IgM によるオプソニン化から細菌を保護し、好中球やマクロファージなどの貪食宿主細胞による貪食を防ぎます。しかし、腸チフス菌は典型的な細胞内病原体であるため、腸チフス菌がそのような抗貪食性カプセルを持っていることは逆説的です。

本研究では、腸チフス菌のVi莢膜多糖の二重性が、示されています。Vi 莢膜多糖が存在することにより、腸チフス菌は好中球による食作用を選択的に回避できる一方で、マクロファージに発現するDC-SIGN、C-型レクチン、に結合することにより、マクロファージの食作用を促進することが示されました。


ここで、tviB-vexE は、Vi莢膜性多糖類を持たない腸チフス菌の変異体です