肝類洞壁内皮細胞においては、L-SIGNがSARS-CoV-2の正当な感染受容体である

Oklahoma Medical Research Foundation, Oklahoma, USAらのグループは、L-SIGNがSARS-CoV-2感染の正当な感染受容体であると報告しています。
https://insight.jci.org/articles/view/148999

L-SIGNがSARS-CoV-2と相互作用をすることを確認する為に、SARS-C-V-2の疑似ウイルスとL-SIGNおよびACE2を発現するHEK293T細胞を用意しました。L-SIGN はご存知のようにC-型レクチンであり、high mannose型のN-型糖鎖にCa2+に依存した結合を示します。SARS-CoV-2 RBDにはAsn343にN-型糖鎖の修飾サイトがあります。Asn343をglutamine (Q)で置換することによって、N-型糖鎖が欠損したspike/Fc融合タンパク質(SpikeN343Q/Fc)を作り、WT(Spike/Fc)と比較しています。SpikeN343Q/Fcにおいてmannose構造が欠損していることは、GNLレクチンブロットで確認されています。このようにして、SpikeN343Q/Fc は、ACE2を発現している細胞には結合するが、L-SIGNを発現していない細胞には結合しないことが確認され、L-SIGNは、SARS-CoV-2 RBDのAsn343に存在する糖鎖を認識して結合していることを確認しました。

ヒトの肝類洞壁内皮細胞(LSECs)には、L-SIGNは発現しているが、ACE2は全く発現していないことが分かっています。SARS-CoV-2とL-SIGNの相互作用が持つ臨床的な意味を明確にするために、COVID-19のホルマリン固定パラフィンエンベの肝臓検死サンプルを用いて、SARS-CoV-2の感染を確認しました。SARS-CoV-2に感染していない同様な検死サンプルとの比較において、このことが明確に示されています(LSECsには、L-SIGN が発現しています(緑色で示す)、そして赤の矢印はSARS-CoV-2が感染している箇所を指し示すものです)。

加えて、このSARS-CoV-2の感染は、ヒトのL-SIGNに対する抗体、そしてまたmannanでドーズ依存的に阻害され、これらがCOVID-19感染の重症化を抑えるための治療薬となり得る可能性も示唆されました。