発熱とともにTransient receptor potential vanilloid 2 (TRPV2)を介してSARS-CoV-2の感染が加速する:新しい感染メカニズムの発見

Key Laboratory of the Ministry of Education for Conservation and Utilization of Special Biological Resources in the Western, Chinaらのグループは、発熱下での新規SARS-CoV-2感染メカニズムを発見しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8210595/

Transient receptor potential vanilloid 2 (TRPV2) は、もともと温度に敏感な分子として分離発見されたものです。TRPV2は、自然免疫において重要な役割を果たしており、通常は小胞体に存在しています。ストレス、成長因子、ケモカインといったようなある種の刺激が入った状態では、TRPV2が小胞体から細胞膜に移動し、Ca2+ の細胞内輸送を促すとともに擬足の発生も促します。擬足はマクロファージの炎症部への移動を助け、マクロファージの食作用を促します。

このTRPV2 がSARS-CoV-2の感染に係わっていることが示されたのです。PBAM、ヒトTHP-1 細胞、マウス・マクロファージ(RAW264.7)を使用したSARS-CoV-2 Spikeとのco-IPアッセイを、37 °C と 39.5 °C という二つの温度条件で行い、TRPV2 と SARS-CoV-2 Spikeの相互作用を検証しました。その結果、TRPV2 と SARS-CoV-2 Spikeとの反応が、37 °Cでは起こらないが、39.5 °Cでは強く起こることが示されました、

39.5 °C という発熱は、顕著にマクロファージ由来のサイトカインの分泌を増強しました、IFN-α、IFN-γ、IL-13、IL-α、TNF-α、IL-10、IL-18、IL-2、IL-4、IL-17A、MCP-1、IL-15 などです。しかも、この現象は、 ACE2やNP-1の存在とは無関係に起こっていました。

更に、TRPV2 の阻害剤であるSKF-96365 がサイトカインの分泌を抑えることが出来るかについて検証が行われ、発熱下においては、SFK-96365が効果的にサイトカインの分泌を抑制することが示されました。

このようにして、著者らは発熱下における新規のSARS-CoV-2感染メカニズムを発見すると同時に、SKF-96365がSARS-CoV-2の発熱下での治療薬になり得るという可能性を示しました。