新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)におけるデルタ変異株(インド株:B.1.617)の変異箇所:何故、デルタ株で感染力が上昇するのか?

熊本大学らのグループは、SARS-CoV-2のデルタ変異株(別名、インド株:B1.617系統)において、何故感染力が上昇するのか?について述べています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931312821002845?via%3Dihub

L452R は、SARS-CoV-2のデルタ変異株においてみられる特徴的な変異です。L452R変異では、ヒトの感染受容体であるACE2への結合力が顕著に上昇しています(Kd = 1.20 ± 0.06 nM)。L452 残基は、ACE2との結合に係わる直接的な場所には存在していないのですが(下図参照)、この構造解析と分子動力学的な考察によれば、L452R変異は、静電的な相補性を助長しているようです。

というのも、結合に関与するACE2の残基(E35、E37、D38)の領域は負に帯電しており、452残基はその近傍に存在するからです。即ち、ACE2との静電的な相互作用は、正に帯電したR452残基の方が、静電的に中立なL452残基よりも当然ながら強くなるのです。

L452R 変異が、SARS-CoV-2の宿主細胞との融合効率を押し上げることも、SARS-CoV-2 Spikeベースの融合アッセイを用いて示されました。L452R 変異は、ウイルスの細胞膜融合効率を押し上げることによって、ウイルスの増殖も助けることになります(下図参照)。