免疫細胞へのSARS-CoV-2感染を引き起こす抗体依存性感染増強(ADE)は確かに存在している

The Institute of Medical Science, The University of Tokyoらのグループは、SARS-CoV-2の抗体依存性感染増強(ADE)はリアルに存在していると述べています。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.01987-21

ウイルス感染は、主にはどんな細胞であっても特定の受容体を経由して起こります。しかし、抗体依存性感染増強(ADE)は、その代替感染メカニズムであり、抗体とIgG受容体(FcγRs)が感染に介在しています。

著者らは、ヒトのIgG受容体 FcγRs(FcγRIA、FcγRIIA、FcγRIIIA)やヒトのACE2(SARS-CoV-2の主たる感染受容体)を発現させたBHK細胞を用意しました。因みに、野生型のBHK細胞には、ACE2は発現していません。そのBHK細胞を、ルシフェラーゼを発現させた水泡口炎ウイルス(VSV)からVSVの遺伝子を除き、代わりにSARS-CoV-2 Spikeに遺伝子を導入した疑似ウイルス(VSV-SARS2-S)で感染させました。

BHK-hACE2 細胞はVSV-SARS2-Sに感染しましたが、BHK-FcγRIA、BHK-FcγRIIA、BHK-FcγRIIIA 細胞らはACE2の発現を欠く為か、感染しませんでした。しかしながら、COVID-19の回復期患者の血漿をVSV-SARS2-Sとインキュベートさせると、2種のIgG受容体(FcγRIIA と FcγRIIIA)が抗体依存性感染増強(ADE)をACE2の存在下で引き起こしました。

そしてまた、SARS-CoV-2感染がマクロファージにおいても回復期患者の血漿で増強されることも示されました。