トリコデルマ菌が植物の病原菌抑制と成長促進に対して有効:トリコデルマ菌のキチナーゼと β-1,3-グルカナーゼの分泌がキー

College of Plant Protection, Hainan University, Haikou, Hainan, Chinaらのグループは、13種のトリコデルマ菌が植物の生長に有効であり、バイオ肥料やバイオ農薬としての応用が考えられると報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8714372/

種子の発芽を有意に促進した13種のトリコデルマ菌ですが、スイカ、チリ、ナス、およびトマトの根の成長に対するそれらの効果について概観してみます。温室実験では、すべての菌株がチリ苗の根の成長を促進する効果を示し、その中で、HL100菌株はコントロールと比較して根の長さが最大12.17%増加しました。 3つの菌株(GZ070、HL100、およびHN059)は、スイカの苗の根の成長を大幅に促進しました。 HN059株は、コントロールと比較して根の長さが18.81%の最大増加量を示しました。トリコデルマ菌株GZ070、HL100、HN059、JX013、XJ087、およびNX043、HL119、HN059、SC012、XJ035、SC098、SC101は、それぞれナスとトマトの苗の根の成長を促進することがわかりました。ナス(40.99%)とトマト(34.68%)の根の長さの最大増加量は、それぞれGZ070株とSC098株によって記録されました。

トリコデルマ菌は成長が早く、病原性真菌の根圏での成長空間を急速に占有する可能性があり、これが、抗菌効果の重要なメカニズムのひとつです。細胞壁分解酵素と揮発性抗生物質の産生は、生物的防除剤としてのトリコデルマ菌の重要なもうひとつのメカニズムです。病原体に対する優れた拮抗作用を有する13種のトリコデルマ菌株(PI> 85%)が、病原体の細胞壁の分解に関連するキチナーゼおよびβ-1,3-グルカナーゼを分泌することが示されました。即ち、トリコデルマ菌は、根圏空間や栄養を求めて病原体と競合するだけでなく、それら病原体の細胞壁を分解し、菌糸を変形させ、さらには消化し、病原体の増殖を阻害していると考えられます。

幾つかの他所の報告でも、トリコデルマ菌による根のコロニー形成が、様々なペルオキシダーゼ、キチナーゼ、β-1,3-グルカナーゼ、およびリポキシゲナーゼ-ヒドロペルオキシドリアーゼ経路を含む防御関連植物酵素のレベルを増加させていることが示されています。キュウリでは、T-203株による根のコロニー形成により、葉のフェノール配糖体レベルが上昇し、それらのアグリコン(炭水化物部分が除去されたフェノール性グルコシド)が、様々な細菌や真菌に対して強力に阻害作用を示すことも分かっています。