SARS-CoV-2 Spikeタンパク質のNTDをターゲットとする中和抗体のエピトープの特徴:糖鎖と変異の影響について

Columbia Universityらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のSpikeタンパク質に対する中和抗体について、特にNTDをターゲットとする中和抗体の特徴について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7953435/

NTDをターゲットとする抗体については、17種の既報が存在しています。これらの抗体は、NTDの特定の領域をターゲットとしていることが分かりました(Supersiteと呼ぶ)。このSupersiteは、Spikeの周辺、3回回転軸から遠位、ウイルス膜とは反対側に位置し、この表面は、N 17、N 74、N 122、およびN 149の4つのN型糖鎖に囲まれており、名目上は「糖鎖フリー」になりますが、実際には糖鎖の分子動力学的な揺らぎで糖鎖カバレッジの影響を受けます。また、このSupersiteの領域は、強い正の静電ポテンシャルを持っており、対応する抗体は相補的な強い負の静電ポテンシャルを持つようです。

SARS-CoV-2の変異株、特にB.1.1.7、B.1.351は、感染力の増加が懸念されているのですが、これらの変異株はほとんどのNTDをターゲットにした中和抗体から逃れてしまいます。B.1.1.7にはNTD欠失変異D69-70およびD144が含まれ、B.1.351株にはNTD変異D242-244およびR246Iが含まれています。144、242-244、および246を含む変異は、すべてSupersite内にあります。69-70での欠失はSupersiteの外側にありますが、NTDのhairpin N2 loopの一部を形成することから、この欠損は、Supersiteの構造に大きな影響を与えている可能性があります。