SARS-CoV-2感染におけるCD147の役割について

Milano University Medical School, Milano, Italyらのグループは、SARS-CoV-2の感染におけるCD147の役割についてレポートしています。
https://www.mdpi.com/2073-4409/10/6/1434

CD147 は、免疫グロブリンのスーパーファミリーに属し、色々な組織に発現しています。CD147が重要な役割を果たしていることは、HIV-1、HCV、HBV、KSHVらのウイルス感染症の研究において示されており、CD147とcyclophilin A (CyPA) との相互作用がこれらのウイルスの感染能力を左右していることがその背景にあります。昨年末には、このCD147がSARS-CoV-2の感染においても受容体として係わっているということが指摘されました。

このような背景の元、著者らは、CD147がSARS-CoV-2の感染において如何なる役割を果たしているのかについて研究しています。
CD147に対する抗体で阻害した結果は(α-CD147 Ab)、SARS-CoV-2の感染能力には影響を与えておらず、SARS-CoV-2の感染においては、CyPAとCD147の相互作用は重要でないことが示されました。

CD147 siRNA 干渉でCD147をサイレンシングさせた結果は、ACE2の発現量の低下と絡んで肺細胞へのSARS-CoV-2の感染が低下することを示しており、CD147がACE2の翻訳後修飾のレベルでACE2の発現制御に関わる能力を持って、直接的或いは間接的にCD147がSARS-CoV-2の感染において重要な役割を果たしていることが示されました。