SARS-CoV-2のARDSで命を落とした患者の検死結果が物語るCOVID-19の病理:ウイルスがマクロファージに直接感染する

Karolinska University Laboratoryらのグループは、COVID-19のARDSが死亡の直接の原因である12名の患者の検死から、新たな病理知見を報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8141733/

COVID-19で引き起こされるARDSにおいては、肺は液体で満たされて重く、広範囲にゴム状に硬化していました。このプロセスは、肺細胞におけるウイルスの増殖によって引き起こされ、肺胞上皮や肺胞毛細血管と肺胞内空間との間のバリアの破壊が大規模に進んだ結果です。この破壊が進行するにつれて、浮腫液や更には全血が肺胞空間に流れ込み、肺胞空隙が消失します。 血液凝固のカスケードが始まると、フィブリンの蓄積が進み、肺胞内の血液も凝固してしまいます。重要なことは、肺細胞のほんの少数しか溶菌感染を起こしておらず、大部分の肺細胞は細胞質の膨れ、小胞変性、核異型というような形での細胞変性効果を示しているということです。

興味深いことに、ウイルスは肺細胞やマクロファージで増殖しており、気管支上皮や内皮、周皮細胞、間質細胞では増殖しておらず、その感染機構の詳細は分からないものの、マクロファージらの食細胞がウイルスを取り込んで直接自身が感染していることを示唆するものです。

ここで見られる肺の硬化は、CD163+マクロファージや骨髄系細胞の大規模な蓄積、過剰な上皮細胞や間質細胞の増殖反応、あふれんばかりの血管新生らを伴っています。 このような肺の硬化をひき起こす内皮のダメージは、ウイルス感染による直接的な細胞変性ではなく、大規模なバイスタンダー効果によって引き起こされたと考えられます。恐らく、ウイルスが感染した肺細胞から放出されるアポトーシスを誘導するORF3aらの液性因子によって誘起されたものと考えられます。