SARS-CoV-2の感染受容体であるACE2の発現が、自然免疫シグナルパス(Toll様受容体)の活性化で上昇するらしい

北海道大学らのグループは、ACE2とTMPRSS2の発現に対して、トール様受容体(TLR)のアゴニスト、及びフルチカゾン点鼻薬(FP)が如何なる影響を与えるかについて報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8107375/

SARS-CoV-2の感染については、宿主細胞表面に存在する二つのタンパク質、angiotensin-converting enzyme 2(ACE2)、及びtransmembrane protease serine 2(TMPRSS2)が主要な役割を果たしているとされています。著者らは、自然免疫のシグナルパスの活性化がACE2やTMPRSS2の発現に如何なる影響を与えるか?そしてまたFPの投与がどんな影響を与えるのか?について研究しています。

実験細胞として、鼻腔粘膜から取得されたヒト鼻腔上皮細胞(HNECs)が使用されました。HNECsをPoly(I:C) で刺激しました。Poly(I:C) はdouble-stranded RNA (dsRNA) であり、ウイルス感染のモデルにおいて、しばしばTLRsのアゴニストとして使用されます。

ACE2とTMPRSS2の発現レベルは、免疫染色らによって評価されました。ACE2の発現量は、顕著にPoly(I:C) の刺激によって上昇しましたが (2.884±0.505-fold change vs. untreated cells, p=0.003)、TMPRSS2に関しては統計的な誤差の範囲で顕著な差はみられませんでした。このPoly(I:C) 刺激によって発現上昇したACE2は、FPの投与によって抑制されることが示されました (0.405±0.312-fold change vs. Poly(I:C)-treated cells, p=0.044)。

FPがSARS-CoV-2の感染を押さえる効果があるのかどうかについては、更にin vivoでの研究が必要です。