妊娠中にSARS-CoV-2に感染した場合の胎児における免疫について

Stanford University School of Medicineらのグループは、妊娠中にSARS-CoV-2に感染した場合の胎児における免疫について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33972953/

幼児の病原菌に対する免疫というのは、母体での効果的な抗体の産生と、その胎盤を通じての母体の抗体の胎児への移動、更に胎児における受動免役の継続性にあります。著者らは、SARS-CoV-2に感染した母親からの抗体の移動率について、懐妊期間における母体のSARS-CoV-2感染時期との関係性、新生児のSARS-CoV-2感染に対する抗体応答、及び受動免役の継続性について研究しています。

本研究は、SARS-CoV-2に感染した145人のは母親と、その147人の胎児に対して行われました。125対の母体および臍帯血サンプル中の抗体には顕著な正の相関関係が認められました(Rs=0.93, p<0·0001)。胎盤を通じての抗体移動率は、77のIgG陽性の母親と胎児の組で計算され、転移率の中央値は1.0(95% CI 0.86-1.09)となりました。母親が重度であった場合に、無症状や軽度/中度の場合に比べて、抗体移動率が顕著に高くなっていました(重度 vs 無症状:1.6 vs 1.0, p=0.003)及び(重度 vs 軽度/中度:1.6 vs 0.9, p=0.002)。

最初にPCR検査で陽性が判明した時期から、出産までの経過時間ごとの抗体の移動率は、0.6(<60日, n=22)、1.2(60-180日, n=27)、そして0.9(>180日, n=5)となりました。この結果は、胎盤を通して行われる抗体の移動が、出産の2か月以上前にSARS-CoV-2の感染が起こっていた場合により高くなることを示しています。つまり、このことは、妊娠中の母親に対するワクチン接種の最適なタイミングを決定する上で非常に意味のある結果だと考えられます。