SARS-CoV-2の感染は、細胞間感染でも広がる:ACE2はその場合感染のメディエーターとしてさほど重要ではない

Ohio State Universityらのグループは、SARS-CoV-2感染拡大に、細胞間での直接的な感染が一役買っているといると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8183005/

ACE2は、SARS-CoV-2やSARS-CoVの主要な感染受容体となっています。SARS-CoV-2やSARS-CoVとACE2の結合を介した感染は、下図に示すように宿主細胞のACE2の発現増加とともに線形的に上昇します。しかしながら、興味深いことに、SARS-CoV-2の細胞間感染は、下図に示すようにACE2の比較的低い濃度で飽和し、細胞間感染の最大値に達した後、ACE2の発現上昇とともに逆に減少し始めます。このSARS-CoV-2の細胞間感染のパターンは、通常の感染パターン(cell-free infection)とは違っており、ACE2を介した感染とは独立に細胞間感染が起こっていることを示唆しています。

興味深いことに、細胞間感染の場合でも、エンドソーム経由の感染パスは生きているようであり、SARS-CoV-2やSARS-CoVのウイルス糖タンパク質を開裂する酵素をブロックするCatL inhibitor IIIや、エンドソームのpHを中性化するBafA1らで、細胞間感染が抑制されることが下図に示されています。