Mタンパク質の比較:SARS-CoV-2, SARS-CoV, MERS-CoV

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のウイルスエンベロープには、Sタンパク質、Eタンパク質、Mタンパク質が存在しています。Sタンパク質はウイルスの感染に深く関与しているため、非常に多くの研究がSタンパク質をターゲットとして行われています。しかし、Mタンパク質に関する構造やその機能に関する研究例は多くはありません。一般的には、Mタンパク質の機能は、ウイルス粒子構造の保護として理解されており、Mタンパク質にRNA-Nタンパク質複合体とS-タンパク質が結合し,小腔内に感染性粒子として出芽し,エクソサイトーシスで細胞外に放出されると考えられています。

King Abdulaziz City for Science and Technology, Riyadh, Saudi Arabiaらのグループは、Mタンパク質に着目し、SARS-CoV-2, SARS-CoV, MERS-CoVの違いについて研究しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1018364720304493?via%3Dihub

下記のような事柄が指摘されています。

Mタンパク質は膜貫通型タンパク質であり、3つの膜貫通ドメインを挟んで、N末端ドメインとC末端ドメインが存在する。
アミノ酸配列の観点からは、SARS-CoV-2では、S4残基(221-224)が挿入されているのが大きな特徴である。
天然変性タンパク質領域について、SRAS-CoV-2では二つの領域(1-7, 205-222)、SARS-CoVでは三つの領域(1-6, 207-210, 216-221)、MARS-CoVでは二つの領域(1-6, 216-219)が存在し、これらの違いは、ウイルスの異なった環境下でウイルス粒子を保護し、ウイルス感染モードに関係している可能性があるかも知れない。
B細胞エピトープになり得る領域は、下記であろうと推察される。
SARS-CoV2    183-189 ASQRVAG, 200-217 RIGNYKLNTDHSSSSDNI
SARS-CoV     183-188 SQRVGT, 199-215 RIGNYKLNTDHAGSNDN
MERS-CoV     180-188 MVKRQSYGT, 200-211 AGNYRSPPITAD