IgG Fcのコアフコース脱修飾が新型コロナウイルス(COVID-19)の重症度と相関している

2021年3月1日のブログ記事において、HIVに感染した患者で、HIVのエンベロープタンパク質であるgp120に特異的なIgGのcore fucose修飾が減少しているケースがあることについて述べています。

University of Amsterdamらのグループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した場合にも、SARS-CoV-2のS-proteinに特異的なIgGにcore fucoseの修飾が減少している場合があることを指摘しています。
https://science.sciencemag.org/content/371/6532/eabc8378.long

IgGのcore fucose修飾が減少すると、effector効果(ADCCやADCP)が増強されることが知られており、これが良い方向に働けば、ウイルスの排除を加速することができます。HIVの場合は、正にこのケースが当てはまっています。しかし、免疫は諸刃の刀であり、新型コロナウイルスの場合には、IgGのcore fucoseの減少がサイトカインストームの引き金を引き、組織ダメージを与えてしまう場合があると推測されます。

下図において、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を発症してしまった場合には、IgG全体のcore fucose修飾には変化が無いのですが、S-protein特異的なIgGのcore fucose修飾が減少していることが示されています。即ち、これによってeffector機能が増強されていると考えられます。一方、core fucoseの修飾が減少すると、炎症性サイトカインIL-6の産生が加速され、炎症性マーカーであるCRPも高くなることも示されています。