COVID-19においてはリンパ球減少症が見られるが、何故かTIM-3 CD4+は増加している

University of Medical Sciences, Babol, Iranらのグループは、COVID-19の重症から中症の患者におけるCD4+ T 細胞のサブセットに見られる興味深い現象を報告しています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/iid3.526

COVID-19における重症から中症の患者においては、健常者に比較して、TIM-3 が CD4+ T 細胞において顕著に過剰発現しており、CD4+ TIM-3+ CD39+ リンパ球も重症患者において健常者よりも顕著に高くなっていました。

COVID-19の重症から中症の患者においては、健常者に比べてリンパ球全体が顕著に減少し、リンパ球減少症が見られることが知られています。これは、多くのT 細胞が血管から肺組織の間質に侵入することにより、末梢血のT 細胞減少症を引き起こすからと考えられます。しかしながら、CD4+ T 細胞については、すべてのグループで大きな違いが見られるわけではなく、それと対照的に、全体的なリンパ球減少症以外に、CD8+ T 細胞がCOVID-19重症患者で健常者に比べて顕著に減少することもCOVID-19の大きな特徴です。

TIM-3 は、このような疲弊したT 細胞のマーカーの一つであり、Galectin-9 (Gal-9) がTIM-3のリガンドのひとつであります。そして、TIM-3/Gal-9 の相互作用がTh1 細胞のアポトーシスを誘導することが分かっています。一方、CD39は、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解酵素によって細胞外アデノシンを生成する外部酵素であり、損傷した細胞は細胞外ATPを分泌し、炎症誘発性反応を引き起こすことが知られています。

何故、このようなCD4+ T 細胞のサブセットがCOVID-19で上昇するのか?については非常に興味深く、治療においては、これらT 細胞を厳密に維持することがとても大切であるように思われます。