抗生物質(スルホンアミド)の小麦の根圏細菌に対する影響

Molecular Plant Physiology, Institute of Botany, University of the Punjab, Lahore, Pakistanらのグループは、小麦の根圏土壌における根圏細菌集団とその呼吸に及ぼすスルホンアミドの影響について報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0264476

スルホンアミドは畜産で広く使用されており、様々な細菌感染症の治療に使用されています。しかし、管理が不十分なため、処理後に土壌に排泄され、非常に危険です。スルホンアミドは、数百mg/Lの濃度で植物、葉、根の成長を損なう可能性もあります。スルホンアミドを含むさまざまな抗生物質の蓄積は、微生物の機能と活性を害し、土壌の酵素活性を低下させます。土壌中の抗生物質は、生物や植物に絶え間ない変化をもたらし、根圏細菌に有害な影響を与える可能性があるのです。

この研究は、小麦品種「Chakwal-50」の根圏から分離された根圏細菌に対する4つの新しく合成されたスルホンアミドの影響を推測するために実施されました。本研究では、小麦の根圏土壌における根圏細菌の感受性と微生物呼吸に焦点を合わせた研究を行っています。

スルホンアミド:2-(フェニルスルホニル)ヒドラジンカルボチオアミド(TSBS-1)、N、2-ビスフェニルヒドラジンカルボチオアミド(TSBS-2)、アミノカルボニルベンゼンスルホンアミド(UBS-1)、およびN、N’-カルボニルジベンゼンスルホンアミド(UBS- 2)を、小麦の根圏から分離されました5つの細菌株、すなわちAC(Actinobacter spp)、RS-3a(Bacillus spp)、RS-7a(Bacillus subtilis)、RS-4a(Enterobacter spp)およびRS-5a(Enterobacter spp)に適用しています。TSBS-1を除いて、すべてのスルホンアミド誘導体は、試験した細菌株に対して抗菌活性を示しました。これらのスルホンアミド誘導体の中で、UBS-1は最高濃度(4 mg/ml)で、RS-4aに対して最も強い阻害効果、阻害ゾーン(11.47±0.90 mm)を示しました。

図中の数字は、UBS-1の濃度(mg/mL)

このように、スルホンアミドは根圏細菌叢に悪影響を及ぼし、そのようなストレス要因に耐えられない根圏細菌もあるため、土壌の肥沃度と植物の成長に大きな影響を与えてしまいます。スルホンアミドによって媒介される根圏細菌の呼吸変化は、暴露の長さと濃度に依存おり、これら抗生物質を注意深く観察し、植物の成長に対する抗生物質の影響を将来的に調査してくことが必要です。