小麦の根圏:ACCデアミナーゼを産生する根圏細菌(Enterobacter cloacae ZNP-4)の小麦の成長促進効果

Department of Bioengineering and Biotechnology, Birla Institute of Technology, Mesra, Ranchi, Jharkhand, Indiaらのグループは、Enterobacter cloacae ZNP-4と呼ばれる1-aminocyclopropane-1-carboxylic acid(ACCD)を産生する植物成長促進根圏細菌(PGPR)が、NaClや金属(ZnSO4))などの非生物的ストレス下でのコムギの成長に及ぼす影響について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9075627/

根圏細菌の多くはACCDを生成します。ACCDは、ACCをアンモニアとα-ケト酪酸に分解することにより、植物の「エチレン・ストレス」のレベルを低下させ、それによってエチレン生成のための基質の利用可能性を最小限に抑えます。 ACCD活性が20nmol α-ketobutyrate mg-1 h-1を超える微生物は、ストレス条件下で植物の成長を促進するのに十分であることが既に分かっています。

他の多くの作物と同様に、小麦の種子の発芽と苗の成長は、塩分と金属のストレスによって世界中で深刻な影響を受けています。塩分ストレスを軽減するために様々な従来の方法が実際に行われていますが、それらのほとんどは費用がかかり、環境に有害であることが問題になっています。根圏細菌は、通常のストレス条件下で植物の成長促進に有効であることが示されていることから、本研究においては、非生物的ストレスの悪影響を軽減するための生物学的防御材としてのACCD産生細菌であるEnterobacter cloacae ZNP-4の有効性を調査することを目的としています。

結果として、ZNP-4菌の接種により、シュート長(41%)、根の長さ(31%)、生重量(28%)、乾燥重量(29%)、光合成色素クロロフィルa(62%)、およびクロロフィルb(34%)など、小麦の様々な成長パラメーターが大幅に改善されました。更に、この菌株は、150 mg kg-1(処理T1)と250 mg kg-1(処理T2)の異なるレベルのZnストレスを含むプランター実験で、植物の成長、バイオマス、および光合成色素を改善するという点で、金属ストレスを最小限に抑えるのに効率的であることも分かりました(処理T1=150 mM NaCl、処理T2=200 mM NaCl、は異なる塩分条件下での実験)。

更に、abiotic stress-induced reactive oxygen species (ROS)の生成に対する細菌接種の影響を、塩分および金属ストレス処理下で評価しています。PGPRのプラスの効果は、一般的に、過酸化水素(H2O2)やスーパーオキシド(O2)といったROS物質の減少と同期しており、これらのROS物質は、脂質の過酸化、細胞膜の劣化、代謝機能障害を引き起こし、最終的に細胞死を引き起こします。ZNP-4菌の接種は、テストされた塩分ストレス下でH2O2レベルを大幅に減少させました。処理T1において43.2%という高い減少(p=0.05)が見られ、処理T2で32.5%の減少が見られました。塩分によって誘発されるO2の生成も、処理T1および処理T2で52.7%(p=0.05)および49%(p=0.05)と大きく減少していました。