乳癌や卵巣癌に対するGalectin-3を標的とする治療薬の有効性

Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New Yorkらのグループは、乳癌や卵巣癌に対するGalectin-3を標的とする治療薬の開発について報告しています。
https://www.nature.com/articles/s41598-021-82686-3

卵巣がんや乳癌などでは、CA125エピトープを持つMUC16と名付けられたムチンが高発現しています。ムチンはO型糖鎖の修飾を強く受けており、末端部にはpoly LacNAc構造が付加して糖鎖が伸長している場合もあります。Galectin-3(Gal-3)は、poly LacNAcにアフィニティーを持ち、それ故、Gal-3はMUC16に糖鎖を介して結合します。Galectin familyは多様な機能を持ちますが、MUC16は癌細胞との関係が深く、癌の増殖や浸潤に関係しているとされています。

著者らは、Gal-3に対するモノクロナール抗体(14D11)を用いて、卵巣がんや乳癌に対するGal-3の阻害効果をin vitroおよびin vivoで評価しました。Gal-3とLacNAcのKd値は~0.2mMであり、Gal-3と14D11のKd値は~14.6nMでした。従って、14D11の方が13,000倍程強いアフィニティーを持つことになります。

MUC16を高発現するふたつの卵巣がん株(A2780, SKOV3)をマウスに移植し、14D11投与の効果を生存率で比較したものが下記です。

また、乳腺癌細胞(MDA-MB-231)をマウスに移植し、14D11投与の効果を比較したものが下記です。これらの実験結果は、Gal-3の阻害によって癌の増殖を抑えることができることを如実に示しています。