下水などの廃水処理プロセスに使用される好気性粒状汚泥中の細菌が作り出すEPSの糖鎖変化をレクチンマイクロアレイで調べる

Department of Biotechnology, Delft University of Technology, Van der Maasweg 9, 2629 HZ Delft, The Netherlandsらのグループは、好気性粒状汚泥中の糖鎖組成の変化について、レクチンマイクロアレイとGC-MSらを用いて評価した結果について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10788855/

好気性粒状汚泥は廃水処理に使用され、単一の汚泥システム内で炭素、窒素、リン、およびその他の汚染物質を除去することができる微生物凝集体です。本研究では、好気性粒状汚泥から抽出した幾つかの細胞外高分子物質(EPS)サンプルの糖鎖プロファイルの動的変化をレクチンマイクロアレイとGC-MSらを用いて評価しています。

EPS は、排水処理リアクターの運転開始後、海水条件への適応中のさまざまな段階、即ち、運転開始初期、運転開始後18日目、および 30日目で収集されました (EPSt0、EPSt18、および EPSt30と略す)。

レクチンマイクロアレイの適用により、EPS中に糖タンパク質の存在が確認され、海水条件への適応に伴う糖タンパク質の変化がレクチンマイクロアレイにより見事に補足されました。更に、レクチンマイクロアレイの結果は、GC-MSらによって実行された他の分析の結果と一致しており、レクチンマイクロアレイが、粒状汚泥などの微生物凝集体中の糖タンパク質のハイスループットな糖鎖プロファイリングに適したプラットフォームであることを示唆しています。

興味深いことに、EPSt18にはEPSt0およびEPSt30よりも多くの糖タンパク質が存在しており、EPSt18の糖鎖修飾パターンは著しく多様です。これは、環境変化、つまり塩分濃度の増加に応答して、微生物の適応戦略のひとつがタンパク質の糖鎖修飾の量と多様性を変化させる可能性があることを示しています。