キチナーゼ3様タンパク質(CHI3L1/YKL-40)が新型コロナウイルス(COVID-19)の新規創薬ターゲットとなり得る

Brown Universityらのグループは、キチナーゼ3様タンパク質(CHI3L1/YKL-40)が新型コロナウイルス(COVID-19)の新規創薬ターゲットとなり得ることを報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33442679/

新型コロナウイルスに感染しても大多数は無症状か軽症ですが、10~20%は入院を余儀なくされます。特に興味深いのは、COVID-19の重症化は、年齢や合併症の存在(糖尿病、高血圧、肥満、メタボリックシンドローム、心血管疾患、COPDや喘息など)と深く関係しているということです。CHI3L1は、炎症や疾患によって様々な細胞から分泌され、免疫応答の調整に関与し、細胞のアポトーシスを保護することも知られています。興味深いのは、CHI3L1は、年齢やCOVID-19のリスクファクターである合併症の存在で分泌量が増大するということです。そこで、著者らは、CHI3L1とCOVID-19の感染でキーファクターとなるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)、タンパク分解酵素(TMPRSS2)、リソソーム内加水分解酵素カテプシンL(CTSL)の関係性に着目しました。

マウスを用いたin vivoでの実験では、CHI3L1を高発現させると、ACE2, TMPRSS2, CTSLの発現も有意に上昇しました。Calu-3肺上皮細胞を用いたin vitroの実験では、CHI3L1のドーズと共にACE2, TMPRSS2, CTSLが単調に増加することが示されました。また、CHI3L1のモノクロナール抗体であるFRGを投与すると、ACE2, TMPRSS2, CTSLの発現が抑制されることも示されました。COVID-19の患者において、その重症度とCHI3L1の間には、有意な相関関係があることも示されました。

これらのことから、CHI3L1がCOVID-19の治療において、創薬ターゲットになり得るということが強く示唆されます。今後の研究を期待しましょう。