小麦の根圏:グラム陰性土壌細菌 J12、シュードモナス属 J156が小麦の出芽と成長を最も促す

Mohammed VI Polytechnic University (UM6P), Benguerir, Moroccoらのグループは、小麦の出芽と成長を促すリン固定根圏バクテリアについて報告しています。
https://peerj.com/articles/11583/

近年、植物の根と土壌細菌の共生が非常に着目されており、根圏(rhizosphere)と名付けられています。根圏は、動物の腸と腸内細菌の関係と非常に良く似ており、腸の内皮が根の上皮に相当し、腸内細菌が土壌細菌に相当します。根圏細菌や根のグライコームに関する研究は、しかしながら非常に少なく、今後新たな知見が得られる分野としてブログ管理人は多大な興味を持ってその動向をウォッチしています。

リン (P) は、窒素に引き続いて植物に必要な栄養素であり、植物の生長における殆どすべての代謝プロセス、例えば、光合成、エネルギー伝達、呼吸、シグナル伝達らに係わる必要不可欠な主要栄養素であります。バクテリアを含むリン酸塩可溶化微生物は、土地の肥沃化と植物の生長に重要な役割を果たしています。それ故、リンが欠乏している土壌での穀物の生産とその効率を最大化する為に、環境に優しく、しかも経済的な管理手法の開発が非常に大切です。根圏細菌の生物多様性の調査と根圏における微生物相互作用の最適化とその操作は、高いリンの固定化能力を持つ効果的な微生物の接種を実現する上において欠くことのできないステップであります。リンは、有機体あるいはまた無機体として土壌に多く存在するのですが、そのままでは根はリンを吸収することが出来ません。多数の土壌微生物、特に植物の根圏に存在する微生物は、それらのリンを可溶化することで、植物が吸収しやすくなります。リン酸可溶化細菌は、植物成長促進根圏細菌に属し、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン鉱石などのさまざまな供給源からの無機体のリンを可溶化することができるのです。

根圏バクテリアのスクリーニングで、下記のように9種のリン固定種が同定されました、

インドール酸 (IAA) は、植物の生長を促進することが知られています、

アンモニアは、間接的に植物の健康に寄与します。特に病原菌に対する代謝的な阻害剤として作用します。すべての土壌細菌はいろいろな濃度でアンモニアを生成しますが、シュードモナス属J153が最も高濃度のアンモニアを生成するようです。

結果として、グラム陰性土壌細菌 J12、シュードモナス属 J156の接種が、小麦の出芽と成長を最も促すことが示されました。