HIVに感染しても無症状な子供達のIgGには、その糖鎖修飾に特徴が存在する

University of Oxfordらのグループは、HIVに感染した子供達における興味深い免疫反応について報告しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7763548/

HIVに感染して、ART(antiretroviral therapy)治療を受けてもおらず、高い割合でウイルス複製が進行中であるにもかかわらず、正常なCD4カウントを維持する無症状な子供達(PNP)がいます。子供達においては、広域中和抗体(bnAb)の存在も特徴であります。更に、PNPでは、IgGのFcを介したeffector作用(ADCC, ADCP)が強いということも特徴です。

IgGの糖鎖修飾の違いに着目すると、HIVに感染した大人は一般的にagalacto型の糖鎖構造を持つのですが、無症状の子供の糖鎖は健常者と大きな違いがなく、むしろSia修飾が若干高めであり、FcのCore Fucoseの修飾が少ないという特徴があります。

bnAbは、ヘルパーT細胞(Tfh)およびgp120特異的なIgGのSia修飾と相関していました。
IgGのFcを介したeffector効果については、core fucoseの修飾が低くなるほど、強くなることが抗体医薬で良く知られています。

してみるとPNPというのは、基本免疫反応は弱めではあるが、それを補うbnAbが存在し、IgGのeffector作用も強いということなのかも知れません。