ACE2のN90の糖鎖修飾はSARS-CoV-2との結合を弱め、N322の糖鎖修飾は結合を強める

Max Planck Institute of Biophysicsらのグループは、ACE2の糖鎖修飾がSARS-CoV-2のRBDとの結合に及ぼす影響を分子動力学を用いてシュミレーションしています。
https://www.pnas.org/content/118/19/e2100425118.long

構造的に見て、ACE2にある四つの糖鎖修飾位置(N53, N90, N103, and N322)がSARS-CoV-2のRBDと結合に関わる可能性があります。その内、N90とN322の糖鎖が最もRBDとの結合に関わっています。糖鎖の構造の違いももちろんRBDとの結合には影響し、アシアロ型とハイマンノース型がより強くRBDと相互作用するようです。N90においては、マンノースの方がアシアロよりもより強く相互作用し、N322においては、その逆であります。

N90とN322の糖鎖がRBDとの結合に及ぼす影響は異なっており、N90の糖鎖はACE2とRBDの結合を阻害する方向に作用し、N322の糖鎖は逆にACE2とRBDとの結合を強める方向に作用することが示されました。N322の糖鎖修飾を除くような変異がACE2に発生した場合には、ACE2とRBDの結合は非常に弱くなります。N322の糖鎖は主に、RBDのY369–K378, R408, N437, N439, V503領域と相互作用し、V503はN501Y変異の近傍に存在することから、ACE2とRBDの結合を強め、感染力アップに関係している可能性が指摘されました。

なお、ACE2の糖鎖修飾がSARS-CoV-2の結合に与える影響を実験的に調べた論文は幾つか存在し、既に下記を本ブログでも紹介しています。
シアル酸修飾とハイマンノース修飾がSARS-CoV-2の結合を抑える方向に働くのは、実験的にも示されていますね。