膵管腺癌におけるβ3Gn-T6糖転移酵素(Core3 O-型糖鎖の合成に関与する酵素)の重要性

癌の発生、進行、転移において、ムチン型のO-型糖鎖の発現変化が見られることは良く知られています。
産総研のグループは、膵管腺癌の臨床病理とOー型糖鎖の関係について研究した内容を報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0242851

膵管腺癌においては、Tn-抗原とsialyl-LewisX抗原が高発現しています。
しかし、これらの発現量と無病生存期間(DFS)との間には全く相関関係はありません。
興味深いことにβ3Gn-T6糖転移酵素と無病生存期間との間には、しかし、明らかに相関関係があり、β3Gn-T6の発現が高い方が無病生存期間が長くなっていることが示されました。
β3Gn-T6糖転移酵素は、Core3 O-型糖鎖の合成に必要な酵素になります。

現段階では、Core3構造とその伸張構造が何故、無病生存期間を長くするのかについてのメカニズムは判明していません。
今後の研究の進展を期待しましょう。「糖鎖は病態の単なる表現型だ」そういう一般的な懸念を打ち砕く成果に繋がるかも知れません。