新型コロナウイルス(COVID-19)回復患者の血漿中和抗体が効かなくなる

ワクチン開発の重要な問題は、ワクチン接種を受けた人々のポリクローナル免疫応答の選択圧下で、ウイルスがその免疫から逃れるために進化してしまわないか?ということであり、変異を受けたウイルスに対して有効性を担保できるか?ということになります。

Fondazione Toscana Life Sciences, Siena, Italyらのグループは、新型コロナウイルス(COVID-19)回復患者の血漿中から得られた中和抗体(ポリクロナール)を用いて、ウイルスと共培養を行った結果について報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33398278/

本実験においては、20人の回復患者の中和抗体について最も力価の高い患者のそれを使用し、VERO E6細胞とSARS-CoV-2を100日間(14継代以上)に渡って共培養し、中和抗体の力価の変化とウイルスに発生した遺伝子変異の関係を調査しています。本実験では、Sタンパク質のNTDとRBDに下記のような変異が起こっており、それとともに、中和抗体の力価が下がっていく様子が如実に示されています。

  1. deletion of the phenylalanine in position 140 (F140) on the S-protein NTD N3 loop.
  2. glutamic acid in position 484 of the RBD was substituted with a lysine (E484K).
  3. 11-amino-acid insertion between Y248 and L249 in the NTD N5 loop (248aKTRNKSTSRRE248k).

この実験結果は、力価の高い中和抗体(ポリクロナール)でもウイルスが変異してその選択圧力から逃れていくことを示し、従って、治療にはカクテル抗体を使用することが推奨されます。加えて、変異に対応できる第二世代のワクチン開発の必要性を示唆しています。