全てのβーコロナウイルスに対する中和抗体の存在

一般的なヒトの風邪の原因となるコロナウイルスとして、4種類(OC43, HKU1, NL63 and 229E)が知られています。これに対して非常に病原性の高いコロナウイルスとして、3種類(SARS-CoV, SARS-CoV-2, MERS-CoV)があります。ご存知のように、SARS-CoV-2が2019年末からパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスということになります。

Univ. of Washingtonらのグループは、これらコロナウイルスに幅広く反応する中和抗体についてレポートしています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.12.29.424482v2.full

抗体の交差反応は良く知られた現象ですが、例えば、抗体を用いた抗原検査では交差反応があると正確に抗原ウイルスを特定できなくなります。しかし、交差反応が強ければ、過去に罹患したウイルスの抗体がアクティブであれば、新規ウイルスの感染阻害に役立つ可能性があります。
B6となずけられたコロナウイルスに対するモノクロナール抗体は、幅広い交差反応性を持ち、中和抗体として注目されます。このB6抗体は下図に示すようにS2サブユニット内のこれらコロナウイルスに共通するアミノ酸配列をエピトープとしており、該当箇所は感染に際してのメンブレン融合に関与しています。なお、下図のBinding Curveに出てくるMHVはコロナウイルス科に属するマウス肝炎ウイルスであります。