トウモロコシの根圏:トウモロコシの根のレクチン(MRL)にベータプロテオバクテリアのリポ多糖(LPS)のO-GalNAc残基が結合する

Universidade Federal do Paraná, Curitiba, Paraná, Brazilらのグループは、トウモロコシの根のレクチン(MRL)が、ベータプロテオバクテリア(Herbaspirillum seropedicae)のリポ多糖(LPS)のO-GalNAcを認識することで共生が開始されるようだと報告しています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0077001

リポ多糖(LPS)は、非常に複雑な巨大分子であり、グラム陰性細菌の細胞膜の外側に単分子層として排他的に存在します。この複合糖質は、3つの領域からなり、細胞膜の外側に分子をアンカーするLipid A、コアとなるオリゴ糖、そしてO-型糖鎖です。Herbaspirillum seropedicae(野生型)株のLPSは、様々なO-型糖鎖修飾を含むlipid Aを持ち、その変異体株LPSEB(waaL)は、O-型糖鎖修飾を持たないLipid Aのコアしか持っていません。ここで、H. seropedicae というベータプロテオバクテリアは、植物成長促進に関わるバクテリアであり、トウモロコシ、小麦、米、サトウキビといった主要な穀物の成長促進には欠かせないものとして認識されています。

H. seropedicaeの野生型と変異株 waaL は、両方ともドーズ(根圏への接種量)に依存した形で、トウモロコシの根表面へのコロニー形成を示しました(下図のA参照)。しかしながら、変異株 waaLの根のコロニーは明らかに野生型のそれよりも少なく、野生型と変異株を共接種した場合には、野生型がコロニーをほとんど支配し、変異株は追いやられてしまいました(下図のB参照)。

下図において、Aはトウモロコシの根圏に各々のバクテリアを独立に接種した場合を示し、Bは両方の株を1:1で接種した場合を示します。 なお、H. seropedicae 野生型は黒色で、変異株 waaLは灰色で示されています。

これらのことから、H. seropedicaeが根に接着しコロニーを形成する場合の第一ステップが、MRLレクチンとLPSのO-型糖鎖の相互作用であり、根の内部組織に侵入する為の根の表面におけるコロニー形成を他のバクテリアを押し退けて勝ち取る際の要になっていることが分かります。