イネいもち病:イネは、如何にして病原菌の侵入を阻止するか?

岩手バイオテクノロジー研究センターらのグループは、 イネいもち病菌キシラナーゼの糖鎖にイネの糖鎖結合性タンパク質であるOsRMCが結合すると、キシラナーゼのセルロースへのアクセスがブロックされ、キシラナーゼの酵素活性が阻害されることによって病原菌の侵入が阻害されると報告しています。
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1010792

植物のアポプラスト空間は、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロース、およびペクチンで構成される一次細胞壁で作られています。ヘミセルロース多糖類は、細胞壁の物理的性質を制御する上で重要な役割を果たします。双子葉植物のキシログルカンと単子葉植物のキシランは量的には主要なヘミセルロース多糖類であり、セルロースミクロフィブリル間の架橋を形成することによって細胞壁が強化されます。ヘテロ多糖類で構成される細胞壁は、植物病原体の侵入に対する物理的な障壁ともなります。

一方で、植物病原性真菌は、植物細胞壁多糖類の加水分解および酸化分解を触媒する一連の細胞壁分解酵素を分泌し、植物の細胞壁を壊して内部に侵入します。

植物は、真菌の細胞壁分解酵素に対する防御として、様々な活性阻害タンパク質を進化させてきましたが、糖鎖結合性タンパク質を含む真菌酵素の機能を植物がどのように打ち消すかは不明のままでした。ここでは、イネ (Oryza sativa) の糖鎖結合性タンパク質であるOsRMC がいもち病菌キシラナーゼの糖鎖に結合すると、セルロースへのアクセスがブロックされ、キシラナーゼ酵素活性が阻害されることが実証されました。ここで、OsRMCは二つのDUF26 を含むシステイン・リッチ・リピート分泌タンパク質のメンバーです。


(左)野生型(ひとめぼれ)のコントロール(Con)およびOsRMC過剰発現(OsRMC-OX)系統のイネ葉で、イネいもち病菌接種4日後。
(右)イネの葉のいもち病菌の量は、イネのゲノムDNA に対するいもち病菌のゲノムDNAの比率をPCRで定量化。