ST3GAL5を高発現するがん細胞から分泌されるエキソソームが、がんの腹膜播種を促進する

秋田大学医学部らのグループは、ラクトシルセラミド α-2,3-シアリル糖転移酵素(ST3G5)が、ST3G5が高発現しているがん細胞から分泌されるエキソソームによって媒介される腹膜播種を予防するための適切な創薬標的となる可能性があると述べています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37716915/

本論文では、腹膜乳状斑点におけるエクソソームによって媒介される前転移微小環境におけるST3G5(ST3GAL5 およびGM3合成酵素とも呼ばれる) の役割について研究が行われています。

ST3G5が高発現するがん細胞(ST3G5high-cExos)から分泌されるエクソソームには、高レベルの低酸素誘導因子1-α(HIF1α)と解糖系酵素が含まれており、シアル酸結合性のGM3受容体であるCD169(Siglec1とも呼ばれる)の発現上昇によるマクロファージでの取り込みを介して、腹膜乳状斑点に蓄積されることが判明しました。CD169の発現上昇は、正のフィードバックループを介して更なるエクソソームの取り込みを促進します。
尚、GM3は、ST3G5によるシアル酸のラクトシルセラミドへの転移修飾によって形成されるガングリオシドファミリー生合成における最初の分子で、細胞の接着、増殖、および遊走を調節することが知られており、HIF1αは、腹膜乳状斑点における免疫チェックポイント分子(PD-L1)の発現を増加させることが分かりました。

これらの結果は、ST3G5 が一部の癌における腹膜播種を予防するための有望な創薬標的に成り得ることを示唆しています。