SARS-CoV-2 の非構造タンパク質である NSP1 と NSP13 がインターフェロンの活性化を阻害し、ヒトの自然免疫を抑え込んでいる

University of Pennsylvania Perelman School of Medicine, USAらのグループは、SARS-CoV-2の非構造タンパク質であるNSP1とNSP13がそれぞれのメカニズムでインターフェロンの活性化を阻害し、ヒトの自然免疫を抑え込んでいることを示しました。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0253089

自然免疫の抗ウイルス作用はウイルス性病原菌に対する防御の最初の障壁です。RNAウイルスが感染すると、ウイルスRNAやスパイクタンパク質と言ったウイルス病原体関連分子パターン(PAMP)が、RIG-I、MDA5、TLRファミリーメンバーなどのサイトゾルパターン認識受容体によって感知されます。RIG-IとウイルスRNAの結合は、中心的な自然免疫アダプタータンパク質であるMitochondrial antiviral-signaling protein(MAVS)を介して下流のシグナル伝達カスケードを開始します。一旦MAVSが活性化されると、キナーゼである Tank-binding kinase 1(TBK1)と I-kappa-B epsilon kinase(IKKε)が、Interferon Regulatory Factor 3(IRF3)をリン酸化し、その核移行およびIFN-βの転写を誘導します。分泌されたIFN-βは、隣接する細胞のIFN-ɑ/β受容体(IFNAR)に結合し、インターフェロン応答を開始し、JAK/STAT受容体キナーゼを介してシグナル伝達してインターフェロン刺激遺伝子(ISG)を生成します。

著者らは、SARS-CoV-2 非構造タンパク質であるNSP1 と NSP13が、IFN応答のプロモーターとNF-kB活性化を制限することを示しました。特に、NSP1 は、発生期の宿主翻訳を阻害し、NSP13はTBK1と相互作用し、TBK1を介したIFN活性化をブロックしていることが分かりました。

新型コロナウイルス(COVID-19)における糖鎖とレクチンの係りを追う:SARS-CoV-2の感染と重症化に絡んで

本ブログ筆者が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する論文概説記事を書き始めてから、もう直ぐ1年になろうとしています。記事を書き始めたのは2020年の7月で、GlycoTechnicaのOfficial blogサイトでしたが、同年10月以降はMxのブログサイトに場所を移して書き続けてきました。

新型コロナウイルス(COVID-19)における糖鎖とレクチンの係りについて、すべてが解明されたとはとても言えない状況ですが、ポイントは整理されてきた感じがしますので、このあたりで一回「新型コロナウイルス(COVID-19)における糖鎖とレクチンの係り」について、筆者なりの見解をまとめてみたいと思います。

SARS-CoV-2はエンベロープを持つウイルスであり、エンベロープには、S (スパイク)、M (マトリックス)、E (エンベロープ)タンパク質が存在しています。感染にかかわるのは、主にスパイクタンパク質であると考えられています。スパイクタンパク質は糖タンパク質であり、非常に多くの糖鎖修飾を受けています。具体的には、スパイクタンパク質には、22個のN-型糖鎖修飾部位、6個のO-型糖鎖修飾部位があります。 Oligomannose-型の糖鎖は、2ケ所(N234 と N709)、複合型糖鎖は、主に14ケ所(N17、N74、N149、N165、N282、N331、N343、N616、N657、 N1098、N1134、N1158、N1173 および N1194)、更に6ヶ所は、oligomannose-型と複合型が混在しています(N61、N122、N603、N717、N801、N1074)。最も普通にみられるoligomannose-型糖鎖は、 Man5GlcNAc2であります。一方、O-型糖鎖は短鎖にて、Tnやcore1構造が主であります(T73、T76、T478、T676、T678, およびT1076)。

それでは、糖鎖の機能とは一体何なのでしょうか?一般的な認識は、ウイルスがヒトの免疫系を回避するためにまとったスパイクタンパク質のシールディングであるということです。糖鎖は非常に高速に揺れ動いており、スパイクタンパク質に近づく免疫細胞を刷毛で振り払っているというイメージでしょう。スパイクタンパク質は、感染宿主細胞の受容体に結合するS1ドメインと、細胞膜との融合に関与するS2ドメインに分けられますが、S2ドメインは、ほぼ100%近く糖鎖シールディングによって守られています。スパイクタンパク質は宿主細胞に存在するACE2を感染受容体としていると考えられており、その結合部位をRBDと呼びます。具体的には、Arg319–Phe541のドメインがACE2に結合するSARS-CoV-2 RBDになります。このRBD内には、N331、 N343の二ケ所にN-型糖鎖修飾位置が存在し、宿主細胞のACE2ももちろん糖鎖修飾を受けており、N53、N90、N103、N322、N432、N546の6ヶ所にN-型糖鎖修飾位置が存在します。しかし、これらの糖鎖修飾は、RBDとACE2の結合に大きな影響は与えていないとされ、ACE2からN-型糖鎖を除去すると若干ですが感染力が上がるとされ、シアル酸やoligomannoseは感染力を若干弱めるとされています。

スパイクタンパク質のO-型糖鎖については、大変興味深い報告があります。SARS-CoV-2のSタンパク質のS1/S2境界には、PRRA(P681-A684)という配列が挿入されており、furin cleavage siteを形成しています。この近傍にはO型糖鎖が修飾される位置として、S673、T676があります。この位置にO型糖鎖修飾が起こるには、681のprolineの存在が深く関係しています。英国変異株(B.1.1.7)では、P681Hという変異が入っており、prolineがhistidineに置換されています。この為、英国変異株では681にprolineが存在しないことで、S63、T676のO型糖鎖修飾が抑制され、その結果としてfurin cleavage siteの切断効率が上昇し、感染力のアップに繋がっていると推論されています。

SARS-CoV-2の感染においては、ACE2が正規の感染受容体として認識されていますが、ヒトの肺上皮細胞にはほとんど発現していないということが、ある意味物議を醸しだしています。つまり、ACE2を介する感染以外に第二、第三の感染受容体が存在するはずだ!?ということです。C-型レクチン(DC-SIGN、L-SIGN、MGL、Langerin)が着目される理由はここにあります。C-型レクチンは、2種類の結合モチーフを持ち、mannoseに特異性を持つものと、Gal/GalNAcに特異性を持つものが存在します。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は複合型を主流とするものの、Man5GlcNAc2を主要な構造としてoligomannose構造も持つが故に、C-型レクチンとの相互作用は必ずや存在するものと考えられますし、実験的にもスパイクタンパク質とC-型レクチンが相互作用することが実証されています。

更に興味深いのは、スパイクタンパク質のNTDに存在するガレクチン様構造(β-sheet structures)です。NTDがA抗原Type1に結合するという結果が糖鎖アレイを用いて示されています。更には、A抗原Type4にも結合し、lactosaminにもアフィニティーを持つことが同様に糖鎖アレイを用いて示されています。これらの結果は、ABO血液型と新型コロナウイルスの関係性において、O型のヒトに比べてA型のヒトの方が感染しやすいということを見事に説明してくれます。つまりSARS-CoV-2がA抗原にアフィニティーを持ち、O型のヒトは抗A抗体を持つので、SARS-CoV-2の感染を阻害できるということになります。この話に絡んで、自然抗体としての抗Tn(αGalNAc)抗体が少ないとSARS-CoV-2に感染しやすいという報告もあり、SARS-CoV-2とαGalNAcをめぐる相互作用が益々着目されます。

このような実験結果は、ACE2を中心にした感染モデル以外に、宿主細胞に発現するC-型レクチンとの相互作用や、SARS-CoV-2のNTDと宿主細胞に発現しているαGalNAcとの相互作用を引き金として感染が引き起こされるというモデルの存在を強く示唆し、更には、樹状細胞やマクロファージらに高発現するC-型レクチンを介したSARS-CoV-2の直接感染がサイトカインストームを引き起こす切っ掛けになっているのではないかという事を示唆します。

次にSARS-CoV-2に対する中和抗体の話に論点を移しましょう。COVID-19の回復期患者から得られる抗体は、RBDをターゲットドメインとしているものが約35%、NTDをターゲットドメインとしているものが約33%、という報告があります。このNTDをターゲットとする抗体の内、少ないですが、ペプチド部分のみでなく糖鎖修飾(LacNAcとそのα2-3Sia修飾)も同時に認識している抗体が存在しているとのことです、興味深いです。

IgGのコアフコース脱修飾がCOVID-19の重症化に関係しているという話は、更に面白いかもしれません。IgGのcore fucose修飾が減少すると、effector効果(ADCCやADP)が増強されることが知られており、これが良い方向に働けば、ウイルスの排除を加速することができます。しかし、新型コロナウイルスの場合には、IgGのcore fucoseの減少がサイトカインストームの引き金を引き、組織ダメージを与えてしまう場合があるようなのです。これはIgGとSARS-CoV-2の複合体がFcγ受容体と結合し、エンドソームで食細胞に取り込まれたウイルスが逆に食細胞に感染したということを意味しています。

このようにして、これらの研究結果は、糖鎖とレクチンとの阻害剤(多糖類やFc融合レクチン)、或いは糖転移酵素を狙った糖鎖修飾のコントロールもCOVID-19の治療に対して有効な手段になり得るのではないか?ということを教えてくれます。

SARS-CoV-2におけるΔH69/V70という変異はどんな役割をしているのか?

University of Cambridge, UKらのグループは、SARS-CoV-2の多数の独立した系統においてみられるΔH69/V70という変異がどんな役割をしているのか?について述べています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34166617/

WTとΔH69/V70の変異の間には、オーバーオールに見て血清中和活性に対する反応性に差異は見られず、ΔH69/V70変異は抗体から逃れるという意味でのメカニズムは持っていないようです。

一方で、S2スパイクのウエスターンンブロットでは、ΔH69/V70の方が多量の切断されたSpikeがVirionsにもHEK293Tのライセートにも含まれていることが示されました。

結論としては、従って、ΔH69/V70 変異それ自身は抗体から逃れるという意味でのメカニズムは持たず、Spikeの切断を加速することによって感染率を増加させるという機能を持っているようです。

HLA-IとHLA-IIに抗原提示されるSARS-CoV-2のペプチドドメイン

Weizmann Institute of Science, Rehovot, Israelらのグループは、SARS-CoV-2感染に由来するHLA-I と HLA-II 抗原提示ペプチドに関して報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34166618/

ACE2を発現するHEK293T細胞、IHW01070細胞、およびCalu-3細胞をSARS-CoV-2で感染させました。HLA-IとHLA-IIに抗原提示される抗原をプロファイルするために、HLA peptidomicsを使用し、実験は三回行われました。因みに、ご存じのように、HLA-Iは内因性ペプチド抗原を、HLA-IIは外因性ペプチド抗原を提示します。

10個のHLA-Iペプチドが発見されました。
2個はspike proteinから, NEVAKNLNESL and TGSNVFQTR、
2個はnsp3から, STTTNIVTR and YYTSNPTTF、
1個がORF3から, FTIGTVTLK、
1個がnsp1から, HSSGVTREL、
4個がnucleocapsidから, APRITFGGP, RITFGGPSD, NAPRITFGGP & ITFGGPSDSTGSNQNGER。

25個の畳み込まれたペプチドセットがHLA-II抗原としてmembraneから 発見されました。

これらの情報はワクチン開発に役にたちそうですね。

Fcγ受容体を介したエフェクター効果と抗体依存性感染増強 (ADE):SARS-CoV-2の治療用抗体に関して

Biological Defense Program, DSO National Laboratories, Singaporeらのグループは、SARS-CoV-2中和抗体のFcを介したエフェクター機能について研究しています。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0253487

抗体依存性感染増強 (ADE)は、治療薬として抗SARS-CoV-2抗体を使用する場合の大きな懸念として存在しています。ADEは、Fcγ受容体が関与して、食細胞における感染を増強した場合に起こります。ADEの可能性を排除するために、Fcγ受容体が関係しない例えばIgG4アイソタイプを使用したり、FcγR-null LALA 変異を人工的に導入するというような手法がとられます。しかしながら、これらの手法は逆効果をもたらし、抗体の持つ能力を下支えするシグナルパス、例えばFcγ受容体を介したADCC効果、を殺してしまうはずです。この問題に答えるために、著者らはSARS-CoV-2回復期患者からRBDに結合する中和抗体IgG1を抽出し(SC31と命名)、その治療効果をそのLALA変異体と比較する実験を行い、SC31はADEを起こすことなく、Fcγ受容体がかかわるINF-γらの抗ウイルス応答を示しました。

SC31の治療効果におけるFcγ受容体を介したエフェクター効果を確認するために、SC31とそのLALA変異体の比較を行っています。 FcγRIIIa ADCCシグナルパスの上流の活性化を評価するために、ADCC reporter assayを組み込んだFcγRIIIaを発現するJurkat reporter 細胞株を使用し、SARS-CoV-2 Spikeを発現するようにしたHEK293T株を共培養して、蛍光を測定しました。SC31のLALA 変異体とは異なり、SC31においては、ドーズ依存性を持ちながらADCCシグナルの活性が見られました。

COVID-19におけるハイリスクを特徴づける末梢血の50種の遺伝子プロファイルが物語ること

University of South Florida, Morsani College of Medicine, USAらのグループは、COVID-19の重症度と相関する末梢血の50種の遺伝子プロファイルを分析しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8214725/

ハイリスクのグループでは、7種の遺伝子が高発現し(PLBD1, TPST1, MCEMP1, IL1R2, HP, FLT3, S100A12)、43種の遺伝子が低発現 となっていました(LCK, CAMK2D, NUP43, SLAMF7, LRRC39, ICOS, CD47, LBH, SH2D1A, CNOT6L, METTL8, ETS1, P2RY10, TRAT1, BTN3A1, LARP4, TC2N, GPR183, MORC4, STAT4, LPAR6, CPED1, DOCK10, ARHGAP5, HLA-DPA1, BIRC3, GPR174, CD28, UTRN, CD2, HLA-DPB1, ARL4C, BTN3A3, CXCR6, DYNC2LI1, BTN3A2, ITK, CD96, GBP4, S1PR1, NAP1L2, KLF12, IL7R)。

これら50種の遺伝子を発現している細胞を下記のテーブルにまとめてあります。このテーブルは、末梢血における50種の遺伝子発現の細胞ソースが何であり、COVID-19のリスク増大と関係している細胞がどれであるのかを教えてくれます。この表からは、CD4+やCD8+ T細胞やIgGを産生する形質芽細胞らがローリスク群と相関しているしていることが分かり、強いT細胞応答が重症化を抑えていることが示唆されます。

Galectin-3が腹部大動脈瘤のバイオマーカーになり得る

Taipei Medical University, Taiwanらのグループは、Galectin-3が腹部大動脈瘤の良いマーカーになり得るとしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8200414/

超音波診断が、AAAの診断に対してはゴールドスタンダードであり、高い感度と特異性を持っています。しかし、その感度は、動脈瘤の大きさで変わりますし、動脈瘤下の大動脈拡張には著音波診断はすいしょうされません。この為、動脈瘤サイズを反映する炎症性の血中バイオマーカーがあれば、動脈瘤の発見や進行を検査するのに役立ちます。

151名の腹部動脈瘤患者と195名の健常者の協力を得て、血中バイオマーカーとしてGal-3とIL-6の横断的な研究が行われました。血中Gal-3の濃度は、腹部大動脈溜の患者で健常者に比べて顕著に高くなっていました(96.9 ± 4.5L vs. 76.5 ± 1.9 ng/mL)、同様に血中IL-6の濃度も腹部大動脈瘤の患者で高くなっていました(92.8 ± 5.2 pg/mL vs. 72.5 ± 3.0 pg/mL)。Gal-3とIL-6の診断能力をROC解析した結果、Gal-3のAUCは0.91となり、IL-6のそれは0.72となりました。

Gal-3 は、マクロファージに対する走行性因子であり、それ故、各種の心血管疾患と関連しています。Gal-3が高値となった腹部動脈瘤患者においては、活性化されたマクロファージなど炎症性免疫細胞の心血管疾患への遊走や更なるGal-sの分泌を意味している可能性もあります。

3種のC-型レクチン、MBP, Langerin, Dectin-2、とMannoseの結合様式について抜粋

東北薬科大のグループは、病原菌認識に関わる11種の哺乳類レクチン受容体についてレビューしています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8185196/

このレビューの中から、3種のC-型レクチンについて、ご参考にまとめてみました。
多くのC-型レクチンはマンノースに対して特異性を示し、病原体の認識に深く関わっています。一つ目のマンノース結合レクチンはMBP(MBLとも呼ばれる)ですが、これは自然免疫の補体経路を活性化するものとして知られています。マンノース修飾は哺乳類のN-型糖鎖で頻繁にみられるものであり、何故MBPが外因性のマンノースを認識できるのか不思議ではないでしょうか? 恐らくこれは、哺乳類のN-型糖鎖に比べて、病原菌のマンノース修飾は密度が高いことに原因があると考えられます。C-型レクチンのドメインは、マンノースのOH3とOH4に配位したCa2+イオンを好みます。そのアフィニティーはKd値が1mMと非常に低く、1:1の反応では免疫反応を引き起こせません。しかしながら、MBPは三量体であり、病原菌に発現する多くの末端マンノースと多価的に反応することができます。MBPの糖鎖結合サイト間の距離は50Åであり、そのような多価的な結合にちょうど良い構造となっています。もうひとつのC-型レクチンであるLangerinの場合には、三量体の結合サイト間の距離は40Åであります。 多価的に結合することによって、単一のマンノース結合に比べて、アフィニティーは何と1,000倍 向上することが分かっています。

Dectin-2も同じようにC-型レクチンですが、DC-SIGN、Langerinなど他のC-型レクチンに比べると、Manα1-2Man 構造をまるっと認識することが異なっています。他のC-型レクチンは、末端のManα1-2Man構造しか認識しないのです。内部のマンノース残基を認識できるということは、Dectin-2 は長いマンナン型糖鎖を認識するに優れていると言えるでしょう。

COVID-19治療薬として、TMPRSS2阻害剤としての低分子化合物 ketobenzothiazole が有力な候補に挙がる

Washington University School of Medicine, Saint Louis, United Statesらのグループは、既存のCamostat and Nafamostatに対しても非常に優れた活性を示す知分子のTMPRSS2阻害剤 ketobenzothiazoleを発見した。そのリードが豪物である MM3122 は、recombinant full-length TMPRSS2に対して、IC50 = 340 pM という阻害効果を示し、ヒトのCalu-3肺上皮細胞へのSARS-CoV-2感染に対してもEC50 = 430 pM という阻害効果を示した。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8204910/

尿酸とCOVID-19: COVID-19を発症すると低尿酸血症になるという

Cliniques universitaires Saint-Luc, Belgiumらのグループは血中の尿酸値とCOVID-19の重症度の間に面白い関係があると述べています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8201458/

低尿酸血症の割合は、一般的に外来患者の0.3%程度と言われています。しかし、COVID-19に関する本コホート研究では、SARS-CoV-2感染で入院した患者の20%が低尿酸血症であり、ICUにてエクモを必要とする患者では77%にも増加します。

尿酸は、プリン体の代謝産物であり、肝臓で作られます。腎臓は血中の尿酸値の重要なレギュレーターであります。血中の尿酸は、糸球体によってフィルタリングされ、腎臓の近位尿細管において絶妙な吸収と分泌のバランスが取られています。近位尿細管における尿酸輸送の分子的なメカニズムはまだ完全に解明されていないと言えますが、URAT1 (SLC22A12)が近位尿細管内での尿酸の再吸収を介在する主たるトランスポーターだと考えられています。COVID-19で死亡した患者の腎臓サンプルからの検証では、このURAT1が70%も減少していることが確認されており、これが尿酸の再吸収と分泌のバランスを崩しているものと考えられます。いずれにしても、COVID-19由来の低尿酸血症の原因は推測的であり、多岐にわたる要素が関係しているものと思われます。

ともあれ、血中の尿酸値がCOVID-19の重症化リスクを予見する信頼に足るバイオマーカーであるようです。